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ローリン・ヒル来日記念特集 ~20年を経て再現される愛に溢れた歴史的名盤『The Miseducation of Lauryn Hill』



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 1998年にリリースされたアルバム『The Miseducation of Lauryn Hill』で全米アルバムチャート1位を獲得すると、翌年にはグラミー賞で5部門を制し名実ともに世界最高峰のアーティストとなったローリン・ヒル。そんな彼女が2018年からスタートしたアルバムのリリース20周年を記念する大規模なツアーが、遂に2020年5月12日東京ガーデンシアターにて日本へ上陸する。アルバム収録曲を全曲披露するという歴史的瞬間を目前に、改めて彼女が辿った軌跡とリリースから20年が経った今も音楽史に燦然と輝くアルバム『The Miseducation of Lauryn Hill』の魅力に迫る。

 2020年を迎えた今、1998年にリリースされたローリン・ヒルのソロ・デビュー・アルバム『The Miseducation of Lauryn Hill』を改めて聴きながら、ここまで愛に溢れたヒップホップ・アルバムがあっただろうか、と感じているところだ。豪華なミュージシャンらが集まり完成したこのアルバム。詩人でありローリンの地元であるニュージャージー州ニューアークの市長にも選出されたラス・バラカ(父親は同じく、詩人として知られるアミリ・バラカだ)を教師役に立て、生徒たちとの疑似授業のスキット音源を交えながらアルバムは進行していく。まさに、そのテーマが“愛”なのだ。


「愛をテーマにした歌や映画を知ってるか?」
「恋をしたことがある人は?誰かを愛する時、それはなぜ故だろうか?」
「愛によって心を乱されてしまうのはどうしてだろう?」


といった先生の問いかけと生徒たちのレスポンスを挿入しながら、ローリン・ヒルは全16曲にわたって“愛のテキスト・ブック”を紡いでいく。

 もともと、ワイクリフ・ジョン、そしてプラーズと共にヒップホップ・ユニットであるフージーズを結成したローリン・ヒル。フージーズとしても大きな音楽的成功を収め、中でもヒット・シングル「Killing Me Softly With His Song」を収録した2ndアルバム『The Score』はアメリカ国内だけでも当時600万枚以上を売り上げ、グラミー賞では最優秀アルバム賞のトロフィーを勝ち取るなど、世界規模の成功を収めていた。ローリンに至っては、ラッパー/シンガーとしてだけではなく、以前より「天使にラブソングを2」などの作品で女優としてもその才能を開花。彼女のソロ・デビューにかかった期待は相当のものであった。そして1998年8月、満を辞して『The Miseducation of Lauryn Hill』が発表される。アルバムは発売されるとすぐに初週42万枚以上を売り上げ、ビルボードの総合アルバム・チャートの首位をマーク。当時、女性のソロ・アーティストとしては記録破りの数字だった。また、グラミー賞においては合計10部門にノミネートされ、結果、一晩で最優秀アルバム部門や最優秀新人賞など5つの部門で見事受賞を果たすこととなり、これまた女性アーティストとしては初めての快挙であったと共に、最優秀アルバム部門を受賞した初のヒップホップ・アーティストとしても認定されたのだった。



▲Fugees - Killing Me Softly With His Song (Official Video)


 『The Miseducation of Lauryn Hill』の突出した点はまず、その豪華な参加アーティストにある。フージーズ時代からヒップホップやR&B、そしてレゲエなどのルーツ・ミュージックをミックスしたスタイルに挑戦していたローリンだったが、『The Miseducation of Lauryn Hill』ではさらにファンク、ソウル、ドゥーワップ、ジャズ、ゴスペルといった要素までも盛り込んだ。当時、ローリンはソロ・アルバムの制作にあたり自らNew-Arkというチームを作り、自身が理想とする音楽を思い描きながらレコーディングを進めていった。Rolling Stone誌の記事によると、ローリン自ら「レゲエの高潔さ、ヒップホップの強さ、そしてかつてのソウル・ミュージックのような奏法を盛り込んだものにしたい」と語っており、見事にそのサウンドスケープを具現化して見せた。「To Zion」で印象的なスパニッシュ・ギターを弾いているのはあのカルロス・サンタナであり、ザ・ルーツやプロデューサー集団であるソウルクエリアンズのメンバーでもあり、当時はディアンジェロのアルバム『Voodoo』の制作にも携わっていたとも言うキーボーディストのジェイムス・ポイザーも多くの楽曲で参加。まだ“レジェンド”と名乗る前のジョン・レジェンドも参加している。そして、レコーディング期間中、ローリンと制作メンバーらはジャマイカへと移動。そこで、ボブ・マーリーが所有していたタフ・ゴング・スタジオでアルバムの制作を継続し、現場にはステファンやダミアンといったマーリー家の息子たちもたくさんいたようだ。よって、クレジットにはかつてボブと共演していたミュージシャンらの名前も見つけることもできる(余談だが、ローリンとの間に五人の子供を設けたパートナーであるローハン・マーリーはボブ・マーリーの息子だ)。




 加えて、流麗でロマンティックなスロウ・チューン「Nothing Even Matters」にはディアンジェロを、レイクォン「Ice Cream」をサンプリングし、ブルージーに仕上げた「I Used to Love Him」にはメアリー・J・ブライジを迎え、ヴォーカル同士の見事な掛け合いを披露している。





 そして先述したとおり、本作の秀逸な点は、やはりそのテーマにあろう。『The Miseducation of Lauryn Hill』のレコーディング時、ローリンは長男のザイオンを身篭っていた状態だった。ただ、当時のローリンはまだ22歳。かつ、ソロ・アーティストとしてさらにキャリアに邁進すべきタイミングでもあった。ザイオン君に捧げた一曲「To Zion」の歌詞にもあるとおり、「キャリアを大事にして、賢い選択をしろ」と言われることも多々あったという。しかし、ローリンが選んだ道は「自分の心に従うこと」だった。母になる、という人生のターニング・ポイント、そして、グループではなくソロのアーティストとして新たなキャリアのチャプターに進むというターニング・ポイント。それぞれの岐路に立った当時のローリンがいかにパワフルだったか、本作を聴けば今でもその充実したエネルギーにありありと触れることができる。自分が聴いて育ってきた音楽への愛はもちろん、自身のルーツや信仰への愛、そして人生の中に満ちる愛について歌うローリン。ヒップホップ・ミュージックが持つ可能性を押し拡げつつ、音楽ジャンルを超えて愛される“教典”を創り出したのだ。

 そして、ファンとして嬉しく思うのは、彼女もまたそのレガシーを大切にしている点だ。2018年、ローリンは『The Miseducation of Lauryn Hill』のリリース20周年を記念して、改めて偉大なアルバムを再訪する大規模なツアーをスタートした。今回、いよいよそのツアーの日本公演が行われることとなる。20年の歳月を経てもなおフレッシュに響く本作。ちなみにここ数年はローリンの楽曲も次世代のアーティストにサンプリングされることが多く、ローリンも、ニューヨークのアポロ・シアターで行ったライブでは、「Ex-Factor」がサンプリングされたドレイクのヒット・シングル「Nice For What」を掛けて、キレのいいフリースタイルを披露するという一幕もあった。今回の公演をきっかけに、改めて名盤に触れるとともに、20年の時を経て再現される『The Miseducation of Lauryn Hill』の世界観にどっぷり浸ることができる嬉しさを噛みしめたい。



▲Lauryn Hill - Ex-Factor / Nice For What (Remix) - 5.1.18 - Live at the Apollo Theater


ローリン・ヒル「ミスエデュケーション」

ミスエデュケーション

2019/03/13 RELEASE
SICP-6043 ¥ 1,100(税込)

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Disc01
  1. 01.イントロ
  2. 02.ロスト・ワンズ
  3. 03.ラヴ (Interlude)
  4. 04.エックス・ファクター
  5. 05.トゥ・ザイオン (feat.カルロス・サンタナ)
  6. 06.ハウ・メニー・オブ・ユー・ハヴ・エヴァー (Interlude)
  7. 07.ドゥー・ワップ
  8. 08.インテリジェント・ウィメン (Skit)
  9. 09.スーパースター
  10. 10.ファイナル・アワー
  11. 11.ウェン・イット・ハーツ・ソー・バッド
  12. 12.ラヴ・イズ・コンフュージョン (Skit)
  13. 13.アイ・ユースト・トゥ・ラヴ・ヒム (feat.メアリー・J・ブライジ)
  14. 14.フォーギヴ・ゼム・ファーザー
  15. 15.ホワット・ドゥー・ユー・シンク (Interlude)
  16. 16.エヴリ・ゲットー、エヴリ・シティ
  17. 17.ホワット・ドゥー・ユー・シンク (Interlude)
  18. 18.ナッシング・イーヴン・マターズ (feat.ディアンジェロ)
  19. 19.エヴリシング・イズ・エヴリシング
  20. 20.ミスエデュケーション
  21. 21.君の瞳に恋してる (シークレット・トラック)
  22. 22.テル・ヒム (Live) (シークレット・トラック)

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