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新田真剣佑が歌う話題の洋楽カバーを手掛けたエンジニアが語る「クローサー(トーキョー・リミックス)」ができるまで



「Closer」インタビュー

 2019年のサマーソニックではヘッドライナーを飾るなど、日本でも圧倒的な人気を誇るザ・チェインスモーカーズ。待望の最新アルバム『ワールド・ウォー・ジョイ』の日本盤のボーナス・トラックに収録された、俳優である新田真剣佑をヴォーカリストとしてフィーチャーした「クローサー(トーキョー・リミックス)」が先行配信され、現在ヒットチャートを席巻している。そのリミックス・エンジニアとして参加し、これまでマイケル・ジャクソン、マライア・キャリーから三浦大知、[Alexandros]までそうそうたるミュージシャンの作品に携わっているニラジ・カジャンチ氏に制作秘話、またクリエイターの視点から語るこの楽曲のヒットの要因を尋ねた。

日本語を英語っぽく、そして英語を日本語っぽく

――エンジニアとは、そもそもどんなお仕事なのでしょう?

ニラジ・カジャンチ:僕の仕事は、トラックメーカーさんからいただいたデータ、楽器のパーツをどう料理するのか、全体のバランスを考えたり、奥行きを出したり、ヴォーカルをどう響かせるのかなどを考えつつ、楽曲を完成させる仕事ですね。「クローサー(トーキョー・リミックス)」においては、ミックス・エンジニアとして参加させていただきました。




――これまで国内外問わず多くのミュージシャンの作品に携わっているニラジさんにとって、ザ・チェインスモーカーズはどんな印象ですか?

ニラジ:トラックがシンプルで、音数が少ないにもかかわらず、それで十分と思わせる説得力のあるものを作っている印象ですね。リスナーとして、欲しいと思う要素を、シンプルな音ですべて網羅している。そこが彼らのすごさなのではと思っています。


――彼らと同じ表現力を持つミュージシャンは、これまで存在していたと思いますか?

ニラジ:彼らはDJ出身の人だから、音作りのベースがクラブのフロアにあるんだと思います。そこで、どれだけ多くの人を踊らせることができるのか、身体をグルーヴさせられるのかということを最優先に音作りをしているように感じました。他のジャンルだったら、自宅で聴いた時にどう響くか、楽しめるのかを考える人が多いから、そこは違うのかなって。また、DJ出身のミュージシャンは、もっといろんな音を駆使して踊らせるものを作りこむので、彼らとはちょっと違うのかなって思ってます。

――なるほど。

ニラジ:彼らは、音選びの天才だと思ってます。最小限の音で楽曲を成立させてしまえる、ずば抜けた才能の持ち主じゃないかって。




――その中でも「クローサー」という楽曲には、どんな印象をお持ちですか?

ニラジ:声の存在感がずっとあって……歌っていない箇所にも。すると、リスナーの耳にずっと残る効果があるんですよね。だから何度でも聴き返したくなっちゃうんですよ。また、日本人でも思わず口ずさめちゃうくらいシンプルなポップスの構成でありながら、ダンスできる要素もあるから、多くの人を魅了させる要素、すべてを兼ね備えた楽曲と言えるのではないでしょうか。彼らの他の楽曲も素晴らしいものが多いですが、これが一番わかりやすいと思いますね。


――では、この楽曲のリミックスのお話があった時、どんな心境でしたか?

ニラジ:最初は断りたかったです(笑)。実は多くの人に知られているヒット曲のリミックスが一番大変な仕事なんですよ。オリジナル・ヴァージョンで、すでにイメージが定着しているじゃないですか。リスナーはもちろん、自分自身も。だから、それに負けない音をどう作ればいいのか何日間か考えました。やがて「オリジナルを超えるものを作る必要なんてない。新たな楽曲を制作するつもりで臨めばいい」という気持ちになれましたね。新しい要素は、言葉の違いによって表現できるんじゃないかって。今回のヴォーカリストである新田真剣佑さんの声を使って、日本語を英語っぽく、そして英語を日本語っぽく、パーフェクトなバランスで表現しようと思いました。幸い、彼はアメリカでの居住経験もあったので、英語の発音もパーフェクトでしたし、それを表現できるのかなって。

――これまでプロのシンガーの楽曲を手がけることが多かったと思いますが、別の分野で活躍されている新田さんの声を使う作業に違いはありましたか?

ニラジ:僕の場合、誰が歌っているかとか関係なく「声」として扱っていて、ただベストな楽曲を作りたいという思いで取り組んでいるだけです。でも、新田さんの声を初めて耳にした時、とても上手だなと思いました。俳優という概念は、それを聴いた瞬間に自分の中から消えていましたね。ひとりのプロフェッショナルなシンガーとして向き合っていました。


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新田真剣佑だからこそ作り出せた魅力

(C)Masanori Naruse

――彼のヴォーカリストとしての魅力はどんなところにあると思いますか?

ニラジ:アメリカ育ちということもあってか、グルーヴの取り方が向こうの感覚なんですよね。それが日本語のフレーズでも自然に表現されているんです。僕はこのリミックスに関して、海外の人が聴いても「日本語曲じゃないよね?」と思わせるような楽曲にしたかったんです。BGMとして流れた時に、自然に聴いてもらえるグルーヴを出したかったんです。彼は自然とそれを表現してくれましたね。

――実際、新田さんとのやりとりはいかがでしたか?

ニラジ:ミックス作業をしている時に、一度僕のスタジオに足を運んでくれたんですけど、伝わってきたのは彼のプロ意識の高さ。とにかくこだわりが強くて、彼の中にあるイメージを表現できていないと、はっきりと僕に伝えてくれるんですよ。でも彼は専門用語を知らないため、イメージで伝えてくるので、それを僕が音にトランスレートして彼に聴かせるというやり方で進めました。とてもいいアイデアのぶつかり合いができた気がします。そういうことがないと、楽曲にマジックが起こらないんですよ。

――特に新田さんが、気にされていた部分はありますか?

ニラジ:気にされていたのは、声の生々しさ。最初、それを聞いた時、僕はエコーやリバーブなどの加工をすることで(彼のイメージを)表現できるんじゃないかと思ったんですけど、彼は「違う」って。それで何度も試すうちに、声のボリュームを下げたら「これです!」ってなったんです。トラックに対する声の存在感を、彼は“生々しい”と表現されたんですよね。

――実際、完成した楽曲を耳にした時の新田さんの反応を覚えていますか?

ニラジ:とても喜んでいましたよ。少年みたいな表情で。作業中のプロ意識には尊敬していたんですけど、完成した後のピュアな表情を見て、さらに人間的な魅力を感じましたね。


(C)Masanori Naruse

――また、新田さんだけでなく「クローサー(トーキョー・リミックス)」は、発表されて以降、リスナーからかなり大きな反響が届いています。なぜ、ヒットしているのだと分析されますか?

ニラジ:洋楽のトラックなのに、いきなり日本語で歌い始めるインパクトが強いからだと思います。でも、それに違和感がないので、何度も聴き返したくなってしまう。よくリミックスを聴いた後に、オリジナルを改めて耳にして、そっち(オリジナル)に魅力を感じてしまうと、徐々に聴かれなくなってしまいがちだけど、この楽曲は異なる表現力があるので、そうはならないです。新田さんが歌ってくれたからこそ、伝わったのではないのかなって思いますね。

――なるほど。

ニラジ:また、これはテクニカルな話になるんですけど、オリジナルはトラックに対する声の位置がちょっと下にあるんですよ。でもこのヴァージョンは上にしています。言葉や声がよりクリアに、そしてポジティヴに響くと思ったからです。この結果が違いを出せた部分でもあるのかなって思ってますね。

――今回のプロジェクトに携わったことで、ニラジさん自身、新たなヴィジョンは見えましたか?

ニラジ:これまで日本で、さまざまなプロジェクトに関わらせてもらいましたが、日本は音数の多い楽曲が目立つので、声を活かせるスペースがある楽曲を手がけることが少なかったんです。だから、今までやったことのないことに挑戦することができて、以降の仕事にもいい影響を与えてくれています。また、この楽曲を聴いて、日本のクリエイターの皆さんにもいい刺激を与えられたら嬉しいですね。ジャンルや国境などを越えて、いろんな才能のあるミュージシャンがコラボしてほしい。アイデアをぶつけ合うことで生まれるマジックが、至る所で起こってくれたらと思います。


(C)Masanori Naruse

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