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ライトニング・シーズ初来日記念対談 / カジヒデキ×与田太郎(KiliKiliVilla)



 いよいよ今月に初来日を果たす英国バンド、ライトニング・シーズ。1989年のデビュー以来、絶妙なポップ・センスとリリカルなサウンドでリスナーの支持を集め、さらにその中心人物であるイアン・ブロウディは、エコー・アンド・ザ・バニーメン、ザ・フォールなど、数々の伝説的なバンドのプロデューサーとしても知られている。その記念すべきステージを前に、カジヒデキと与田太郎(KiliKiliVilla)の二人に、ライトニング・シーズのデビュー時の印象や、バンドとブロウディの音楽の魅力を語ってもらった。

ポップスの王道中の王道みたいなものが染み込んでいるんだろうな(カジ)

――ライトニング・シーズは89年にデビュー。おふたりはその頃からリアルタイムで聴かれていましたか?

与田:俺はデビュー・シングルの「Pure」を買いました。89年で空気感が変わった印象で、あとから思えばアシッド・ハウスの影響がロックに届きはじめていた。マンチェスターはハシエンダがあった関係で、いちはやくそういう感覚のバンドが山ほど出てきていたけど、それが90年にはイギリス全土に拡がっていて。リヴァプールのライトニング・シーズは、マッドチェスターのバンドとはまた違う感覚で、エレポップとギター・ポップをうまく組み合わせた音でしたね。


▲Lightning Seeds - Pure

カジ:僕は「Pure」を買えなかったんです。瀧見(憲司)さんが当時マルイがフジテレビでやっていた5分くらいのお洒落な番組に出て、ネオアコ特集のなかで「Pure」を紹介したんですけど、〈すごくいい!〉と思って買いに行ったら、もう在庫がなかった。なので僕が最初に買ったのはセカンド・シングル「Joy」の12インチ。与田さんが言ったように、ダンス・ビートを採り入れたロックが多くなってきたなかで、ライトニング・シーズはよりポップスとして完成している印象。グラウンド・ビートとかを導入していたのもすごくおもしろかったんです。

与田:彼らの甘くてサイケデリックな感覚は、セカンド・サマー・オブ・ラヴのオプティミスティックなムードを反映していたと思います。希望を歌うことにてらいがないというか、ライトニング・シーズやキャンディ・フリップの「Strawberry Fields Forever」の甘い感じ、とにかく夢を見ている感じには、何かが起きていることをすごく感じた。いま聴くと普通のポップスでしょ?って感想だと思うんですけど(笑)。


▲CANDY FLIP - Strawberry Fields Forever

――バレアリック的な耳で聴いていたというのは、なるほどなーと思いました。

与田:リヴァプールはビートルズの街だから、ポップスとしてのこだわりが強いミュージシャンが多いのかもしれませんね。(エコー&ザ・)バニーメンやラーズもいたけれど、マンチェの時期はファームやライトニング・シーズなど底抜けに楽観的な曲を作る人の街というイメージ。マンチェスターのバンドは、その裏側にダークサイド──ドラッグやギャングの問題を抱えているけど、リヴァプール出身の音楽はあまり陰がない印象で(笑)。

カジ:ライトニング・シーズってホントにポップで、みんなで口ずさめるメロディーを持っていますよね。それこそリヴァプールFCのサポーターソングと言えば「You’ll Never Walk Alone」じゃないですか。僕はアンフィールドで何度か生でも聴いたことがあるんですけど、最初に聴いた時は〈なんでこんな演歌みたいな古臭いポップスをみんなで大合唱するんだろう〉って思ったりしました(笑)。もちろん60年代に活躍したリヴァプールのバンド、ジェリー&ザ・ペースメイカーズが63年にカヴァーして大ヒットしたリヴァプールの心のような歌だという事を後で知るのですが、イアン・ブロウディも子供の頃からずっとあれを聴いてきて、そういうポップスの王道中の王道みたいなものが染み込んでいるんだろうなという気がする。


▲Gerry & The Pacemakers - You'll Never Walk Alone [Official Video]

――「You’ll Never Walk Alone」はフットボール・アンセムですよね。それこそJリーグのFC東京にとってもテーマソング的な歌として愛されています。

カジ:加えて、ライトニング・シーズにはビートルズ直系のポップ・センスもすごくある。70年代終盤に、若かりしイアン・ブロウディがやっていたビッグ・イン・ジャパンを振り返っても、独特のセンスを感じますね。

与田:ビッグ・イン・ジャパンは、ブロウディとビル・ドラモンド、ホリー・ジョンソンがいたという凄いバンドで。のちのライトニング・シーズ、KLF、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドですからね。

――その3人が同じパンク・バンドにいたって信じがたいですよね。

与田:街がそこまで大きくないから音楽が好きな人は顔見知りになれるという風土はあるんだろうなって。そういうシーンの重要な場所に当時からいれたんだと思います。それにしても「Relax」が世界中で大爆発している瞬間、ブロウディはどう思っていたのか(笑)。


▲Frankie Goes To Hollywood - Relax

――イアン・ブロウディはプロデューサーとしてもリヴァプール出身のバンドを多く手掛けてきました。地元に根差した活動をしてきた人という印象も強いです。

与田:80年代はエコー&ザ・バニーメンの『Crocodiles』やペイル・ファウンテンズの『From Across The Kitchen Table』とか。クリーントーンにコーラスやディレイをかけて、空間的な音作りをしているサウンドが特徴でしたよね。

カジ:2000年代でもズートンズやコーラルの作品を手掛けていました。リヴァプールのいい兄貴的な存在なんでしょうね。

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    ちょっと客観的には聴けないレヴェルで(笑)(与田)
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あの時代の思い出がどうしても蘇るんですよ。
ちょっと客観的には聴けないレヴェルで(笑)(与田)

――話をライトニング・シーズに戻すと、セカンド・アルバム以降の作品についてはどうですか?

カジ:僕はセカンドの『Sense』がすごく好きなんですよ。その頃ZESTってレコード屋でアルバイトをしていて、このアルバムからのシングル──「Sense」「Life Of Riley」をとにかくプッシュしていました。「Sense」には、テリー・ホールが参加していて。「Life Of Riley」はクラブ・ヒットにもなりましたよね。自分がポップな音楽を作りたいと思ったらやっぱりライトニング・シーズの曲を参考にすることも多いんです。僕はトーレ・ヨハンソンとか海外のプロデューサーと制作してきたけど、なんで当時イアン・ブロウディに頼まなかったかなという気持ちもあるくらい(笑)。


▲The Lightning Seeds - Sense

与田:92~93年のイギリスは、94年にオアシスが出てきてブリット・ポップ全盛期になる前のちょうどエアポケットみたいな時期でした。そのなかでライトニング・シーズはすごくマイペースにやっているという印象。

カジ:92年くらいからグランジがトレンドになって、アシッド・ジャズは以前から流行っていたけど、その頃ブランド・ニュー・ヘヴィーズの台頭もあってさらに注目されて。日本もフリー・ソウルの人気が出てきて、どんどんモードは変わっていった。こういうポップは、ほかのものに埋もれがちだったかもしれないけど、個人的にはすごく好きだったな。

――当時のインディー系のリスナーが、ライトニング・シーズと一緒に聴いていたバンドは?

カジ:イギリスでブラーやオーシャン・カラー・シーンが出てきたタイミングだったのでそういうバンドとも聴かれていたし、もうちょっとインディー・ポップが好きな人だったらサラ・レーベルや、アメリカならローファイの〈K〉とかね。ライトニング・シーズはもっとメジャー感が強いし、実はちょっと違うんだけど、日本的には両方聴ける雰囲気もありましたよね。

与田:みんな、ごっちゃに聴いていましたよね。

カジ:フリッパーズ(・ギター)も聴けばVenus Peterも聴いているし、ライトニング・シーズも聴いているというリスナーが多かったと思います。

与田:当時、ジャミロクワイが出てきたら、誰しもが聴いていたし、同時進行で新しいものが共有されていた。逆に言うとライトニング・シーズはマンチェ騒ぎが一山越えたあとも変わらないことをやっていたんだけど、それゆえ新しい流れのなかでは見落とされる部分が若干ありましたよね。

――とはいえ本国では、サード・アルバムの『Jollification』はプラチナ・ディスクとなるくらいヒットしています。そうした流れをふまえて、いちばんの代表曲になったのが96年のEUROでイングランド代表の公式応援歌となった「Three Lions」。


▲The Lightning Seeds - Three Lions '98 (Official Video)

カジ:「Three Lions」でフィーチャーされているフランク・スキナーはお笑いの人なんですけど、日本で言うとタモリさんに近いくらいの人気者。そういう人とライトニング・シーズが一緒にやっていること自体がおもしろいですよね。

与田:長くやっているミュージシャンって山や谷がありつつも、キャリアの起点になるものが10年に一度くらいは必ずあるじゃないですか。ライトニング・シーズにとっては、ファースト・アルバムの次のエポックメイキングな瞬間が「Three Lions」だった。この曲はサッカー・ファンなら知らないとは言えない、EUROやワールドカップが開催される度にチャートインする大アンセムですよね。それ以前もイギリスはニュー・オーダーの「World In Motion」があったり、ポップ音楽とフットボールの繋がりがディープ。加えて、そこには日本のリスナーには完全に掴みきれない洒落っ気やユーモアがあるような気がするんです。


▲New Order - World In Motion (Official Music Video)

カジ:イギリスにはサッカーの歴史的な名物番組で『Match Of The Day』というプログラムがあるんですけど、あの番組でもライトニング・シーズやインディー・ロックがよく使われているし、ロック・ミュージシャンもゲストで普通に出るんですよ。『Soccer AM』とかね。音楽とフットボールってものすごく密接な関係なんです。

――サッカーとロック・ミュージックは、イギリスの市民階級にとって、自分たちの生活や人生を映し出すカルチャーなんでしょうね。

与田:フットボール&ロックンロール&ビアー、分かちがたいものなんだと思います。

――最後に今回の初来日公演への期待を教えてください。

与田:初期の名曲はもう純粋に楽しみたいですよね。生で聴けるんだ!って喜びが大きいです。俺はいまファースト(アルバム)を聴くと、あの時代の思い出がどうしても蘇るんですよ。ちょっと客観的には聴けないレヴェルで(笑)。

カジ:初来日だからヒット曲やシングル曲たくさんやってくれると嬉しい。もし「Three Lions」をやってくれたら、会場も大合唱になったらいいですね。あの感じを日本でも味わいたいです。

与田:「Three Lions」の歌詞くらいは、覚えて向かいたいですね。

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