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『音楽の未来』レポート 小野哲太郎(AWA)×高橋明彦(LINE MUSIC)×堤天心(U-NEXT) ~ コミュニケーションとしての音楽



株式会社ニューズピックスとBillboard JAPANによる、これからの音楽のあり方について考える【音楽の未来~NOW PLAYING JAPAN~】が、2019年8月から10月にかけて全3回開催される。9月3日に開催された第2回目のカンファレンス第一部では、モデレーターに音楽ジャーナリストの柴那典氏を迎え、AWA株式会社 代表取締役社長の小野 哲太郎氏、LINE MUSIC株式会社 取締役COO高橋 明彦氏、株式会社U-NEXT 代表取締役社長の堤 天心氏が登壇。「コミュニケーションとしての音楽」をテーマに、各サービスがどのように人々の生活に浸透しているか、セッションが行われた。

音楽と何を掛け合わせるのかが、それぞれのサービスの個性

柴 那典:トークセッションを始める前に、まず前提として確認させていただきたいことがあります。10年以上前から、音楽業界には不況というイメージがありました。ただ今回お越しいただいたストリーミングサービスの皆さんがローンチされた2015年というのは、大きなターニングポイントでした。世界全体の音楽市場は2015年以降V字回復していて、この後も拡大が予想されています。つまり、音楽業界というのは儲かる市場になってきているんですね。まだまだ、少し前の常識で「CDが売れないから、アーティストはライブで稼がないといけない」ということをおっしゃる方もいますが、それは一時代前の常識で、音楽ソフトの市場はアメリカ、ヨーロッパ、南米、アジアの各国で成長してきています。

日本では、CDなどパッケージの売り上げが占める割合も大きいので他国に比べてそこまで大きな存在感はありませんが、ストリーミング市場はかなりの勢いで伸びてきています。そして、この先スマホネイティブな10~20代の皆さんの可処分所得が増えるにつれ、さらに伸びていくと予想されます。そんな中、音楽と何を掛け合わせるのかが、それぞれのサービスの個性になってくると思いますが、皆さんいかがでしょうか。

小野哲太郎(AWA):AWAでは、音楽を何かに使うというより、音楽をより楽しむために何が使えるかという発想を持っています。音楽の定額制サービスは、とにかく音楽の発見が大切で、毎日 使うたびに新しい発見があるという状態が、「正」だと思っています。当然、多くのユーザーが、すでに好きな曲を何度も聞くことに多くの時間を使っていますが、新しい出会いがないといつしか飽きてしまって使わなくなって、結局 課金をやめてしまいます。なので、できるだけ多くの出会いを演出するというのが重要だと思っています。でもそれが簡単ではないですね。どれだけ秀逸なレコメンドエンジンを仕上げても、音楽を羅列するだけでは、「聞いてみよう」と思う人って、実は多くはないんです。データが証明しているからと言って、聞いたことのない音楽にスッと手を伸ばすわけではないってことですね。新しい発見は体験としてはとても大事なんですが、なんでもかんでもオススメを聞くほどユーザーは出会いを顕在的に欲してるわけではない。なので、僕らは「趣味の合う他のユーザーが作るプレイリスト」を介在させることで、聴くはずのなかった音楽を聞く”きっかけ”を作って、出会いを生み出すことを心掛けています。

:AWAのユーザーは音楽をコアに好きな方が多いのでしょうか?

小野:そうですね。AWAのプレイリスターのランキングの上位にいるようなユーザーさんは、音楽マニアだなって方がたくさんいます。そういう方が作ってくれるプレイリストが他のユーザーさんに新しい発見につながっていて、独特の生態系がAWAの中にできています。まさに音楽マニア!みたいな方じゃなくても、たくさんのユーザーさんが気軽にプレイリストを公開していて、誰かに聞かれるのを楽しんでくれています。

:LINE MUSICはプロフィール画面やトーク画面にBGMを設定する機能、トークで楽曲をシェアできる機能など、コミュニケーションを誘発する装置が設計されているイメージがあります。

高橋 明彦(LINE MUSIC):そうですね。先ほど小野さんがおっしゃったように、ストリーミングサービスは同じ音楽ばかり聞かれる傾向があって。本来は同じ料金で5,600万曲を聴くことができるのがサービスの特徴なので、それらを楽しんでいただくために、新しい音楽に出会えるよう、レコメンドやAIなどを使って色んなきっかけを提供しているんですが、やっぱりみんないつもの曲を聴きたいんですよね。ipodに入っている曲がずっと同じだったり、10年前と同じ曲を聴いていたり…。なので、小野さんがおっしゃった、「コミュニケーションやプレイリストで音楽との出会いを広げていきたい」というのは、サブスクリプションサービス全体の課題でもあると思っています。

なので、LINE MUSICはLINEというコミュニケーションツールを活用して、出会いの場を友だちルートで作ることで、音楽への興味にどうフックをつけていくのかというアプローチをしています。チームのメンバーと話すことがあるんですが、レストランや映画、旅行って口コミが重要なのに、なんで音楽の口コミってあんまり機能していないんだろうなって思っていて。Amazonにはレビュー欄がありますが、あれを見て、今まで聴いたことのないアーティストの曲を聴こうと思う人って少ないですよね。毎日こんなに良い曲がリリースされているのに、誰かの口コミで聴く曲を決めることって案外 少ないなって。そこに面白い仕掛けを作ることができないのかというのを、自問自答しています。

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ランキングから、音楽の流行がどのように生まれるのか

:たしかにそうですね。「誰かの口コミで聴く曲を決める人は少ないのでは」という指摘は、AWAのプレイリストを公開できる機能やプレイリストをきっかけに音楽が広まっていくという設計に対してクリティカルな問いだと思いますが、いかがでしょうか。

小野:人が、新しい物やコンテンツに惹かれる理由は、その対象と自分との間にあるストーリーだと思うんです。単純に、データが示すおススメというだけではどうしても弱いなと。「毎週見ているドラマの主題歌を好きになる」とか、「恋人が好きなバンドを好きになる」というのがストーリーの例なんですが、そういった架け橋となるようなストーリーをAWAの中でもっと演出していって、まだ聞いたことがなかったアーティストや曲をどんどん好きになれる場所にしていきたいです。

:なるほど。では堤さんに質問ですが、U-NEXTというサービスの中で音楽をどのように位置づけておられますか。

堤 天心(U-NEXT):2つあると思っています。まず1つ目は映像を通した新しい音楽との出会いです。先ほど小野さんがおっしゃったように、何かのシチュエーションで流れた曲というのは、非常に親和性が高いです。今であれば、映画『天気の子』しかり、映画のヒットにあわせて音楽もヒットしています。そういった意味で我々は映像サービスを通じてミュージックビデオや、アーティストのライブ映像をシームレスにつなぐことで、新しい音楽体験に繋がるのではと思っています。

もう1つは、画面を見ながら音楽を聴く、画面越しにアーティストを見ながら音楽を聴くという音楽映像体験です。アーティストとユーザーの距離感を近づけるという意味では、映像を通じて、例えばファンクラブのようなインタラクションな体験を提供するというアプローチに、可能性があると思っています。少し話が逸れるのですが、今『V LIVE』というアプリが流行しているのをご存知ですか? YouTubeチャンネルのようにライブ配信をしたり、事前に「こういうライブをやりますよ」と告知をしたりと、インタラクションなやりとりができるサービスで、主にK-POPのアーティストが使っています。これは、ユーザーとアーティストの距離を埋める、新たなプラットフォームが実現している一例ではないかと思っています。なので、我々も作品を軸にして音楽を掛け合わせるというやり方以外に、アーティストを軸にして曲単位ではなく、そのアーティストが好きだという衝動に応えられるようなプラットフォームとしての可能性があるのではと考えています。

:ランキングについても、皆さんの意見をお伺いしたいのですが、あいみょん、King Gnu、Official髭男dismなど、ストリーミングのランキングで上位を獲得したことからヒットするアーティストが増えています。そのあたりについて、どのように考えておられますか。


▲あいみょん「マリーゴールド」

小野:デジタル配信時代になったことでリリースされる楽曲はこれからも増えていくと思います。手軽に自分の音楽を出せるので。一方でSNSとか定額音楽サービスの浸透で、みんなが聞いてるものへの集中みたいなモーメンタムも加速してるなと感じます。柴さんの書籍でも書かれてますが、モンスターヘッドとロングテールの二極化の話ですね。大量の音楽によってすごく広大なニッチ市場がありながら、先端は極端に細くなっていると思います。

:一度CDを買った人が次の週も同じCDを買うということは原理的にはありえないので、CDランキングの並びは入れ替わっていくのが当たり前です。ただストリーミングサービスは、そうはならないですよね。

小野:CDの時のランキングって売れた枚数じゃないですもんね。だから新譜がどんどん入れ替わります。定額制の場合は再生がメインになるので、どうしても新譜に限らなくなり強い曲がより強くなっていく流れはありますね。


▲Official髭男dism「Pretender」

高橋:私も、まさに同じ感覚ですね。サブスクで一番よく聞かれているプレイリストは何かというと、自分の「お気に入りリスト」なんですよね。それをずっとシャッフルで聴き続けるか、ランキングを聴くかのどちらかが多いです。繰り返して聴かれる傾向というのは、昔はもっと強くて、エド・シーラン「シェイプ・オブ・ユー」が1か月間ずっと1位を獲得したこともありました。ヒットしていることが話題になり、新たに聴く人が増えてリスナーも増え、聞かれ続けるというような。

なので、LINE MUSICではリアルタイムランキングなど、もう少し期間を短くしたランキングを提供することで、もう少しヒット曲のランキングが動く仕組みを作っています。そうやってデイリーでデータを取得することができるのもサブスクの良さでもあって。なので例えば、CMでかかったとか、ネットでバズって、瞬間的に多くの人が聴いた曲のランキングを作ることで、なるべく新鮮度を保てるようにしています。

小野:AWAも、高橋さんがおっしゃったような急上昇ランキングは人気ですね。タワーレコードに、音楽ジャンルごとのランキングがあるように、僕らもジャンルごとのランキングを作ったり。あとAWAの特徴は、プレイリスターという、プレイリストを作る人たちへフォーカスを当てることなので、プレイリスターさんによるプレイリストのランキングも人気です。

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繰り返し一部が聴かれることで、ブームが生まれる

:そういったランキングから、音楽の流行がどのように生まれるのかを見ることができそうですが、そのあたりいかがでしょうか。

高橋:何でも聴けるということは、何を聴いても良いということで、それがそのままランキングになるので、サービスの利用層にもよりますが、LINE MUSICは若者が多いので、比較的テレビなどの影響を受けやすいランキングになっています。

:ドラマや映像のランキングが、その主題歌などの音楽に影響を与えているというのは、私たちのサービスのユーザー動向を見ていても感じますね。

:去年公開された『ボヘミアン・ラプソディ』や今年の『ロケットマン』などの音楽映画がヒットしていますが、そういう映画のヒットをどのようにサービス内で活かしておられますか。


▲『ボヘミアン・ラプソディ』

:映像作品というのは、過去の映画を見たり、ライブ映像を見たり、1つのコンテンツから広がっていく特徴があります。なので、その受け皿として、我々が横に色んなカテゴリーを用意する必要があると思っています。映画単体では終わらない魅力がある作品が生まれるということは、我々にとっても非常にポジティブに捉えています。

:King Gnu「白日」やOfficial髭男dism「Pretender」は、ドラマや映画の主題歌となったこともヒットの後押しとなりました。こういったタイアップからヒットが生まれるという動きについて、どのように考えておられますか。


▲King Gnu「白日」

小野:ドラマや映画以外にも、最近は動画サービスからヒットが生まれる傾向もありますね。例えば、AbemaTVで人気の恋愛リアリティショー『恋する♥週末ホームステイ』で出演した子達がバンドを組み、その曲が配信スタートすると1位になるという動きもありました。なので、タイアップの主戦場がマスメディアから、動画配信サービスになってきていることをすごく感じています。むしろマスメディアはヒットを後追いしてレポートするメディアの立ち位置になってきているなと。


▲Lilac「Hello」

高橋:さっきの問いにも近いと思いますが、音楽では口コミが機能していないこともあって、目から入ってくるCMやドラマがフックになることが多いです。あとは、どういう形でバズって自分に届いているのかは、今後もっと分析が進むと思います。

例えばLINE MUSICでは、最近ミュージックビデオの配信をスタートしたのですが、動画が見られているのか、音楽ストリーミングの方が聴かれているのか、あとどのルートで映像や楽曲と出会ったのかというのは、アーティストや曲によって濃淡があります。それを分析することで、ユーザーごとに影響を受けやすいメディアや、どのようにそれらの出会いがマッシュアップされてコンテンツへの興味が醸成されていったのかが分かるのではないでしょうか。

店舗まで行ってCDを購入するという行動は、とてもハードルが高いですがサブスクはいつでもボタン1つで聴くことが可能です。出会い方=エンカウンターと、ロイヤリティ=興味関心を分析することで、むしろそこからヒットを生むこともできるのではないかと思っています。

:先ほど小野さんから、AbemaからAWAのヒットにつながっていくというお話がありましたが、最近はTiKTokの動きも見逃せません。そのあたりはどうでしょうか。

高橋:TikTokとは音楽サービスとして楽曲連携していて、音楽との出会いの1つとして機能しているのではと思います。TikTokで聴いてみて、面白かったからLINE MUSICで聴いてみようとか、逆にLINE MUSICで聴いて良かったから、TikTokで使ってみようといったように、サービス同士が相互で共鳴しあって、影響を与えあっているのが、今の状況なのではないかなと。

:TikTokで言うと、去年 倖田來未さんの「め組のひと」がヒットするなど、新曲以外の曲が15秒のダンス動画やハッシュタグチャレンジとしてアプリ内で使われています。そうやって、繰り返し一部が聴かれることで、ブームが生まれるという現象は見ていて面白いですよね。


▲倖田來未「め組のひと」

:TikTokも、先ほどお話に出たAbemaTVも動画です。5G時代に向けて、音楽が動画や映像などと共に色々な形で使われることで、より別の広がり方をしていますね。

高橋:そこが、これからの5~10年の形になっていくのだと思います。音楽や動画って、マッシュアップしたり、本来は自由に楽しんでもらうためのものなのに、今はまだCDが中心だった時代の楽しみ方とあまり変わっていません。どうやってバイラルしていくかは変化してきていますが、そういう壁を壊せるような新しい仕掛けにチャレンジできるのが、音楽業界以外から参入したLINE MUSICの役割でもあるのかなと。なので、LINEというコミュニケーションツールのパワーを使って、様々な仕掛けを作り、これからの5年間もっと皆さんと楽しめるようにしたいなと思っています。

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