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『2019年度上半期のヒットを徹底分析』~アーティストをタイプ別に分類する



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チャート・データに基づき、様々なアーティストの特徴(タイプ)を分析

 複数のデータから構成されるビルボードジャパンの総合チャート。その2019年度上半期ランキングが発表された。ソング・チャート“HOT 100”では米津玄師「Lemon」が、アルバム・チャート“HOT ALBUMS”では星野源『POP VIRUS』がそれぞれ首位を獲得。そして、これら両チャートを合算し、アーティスト別で集計したランキング“TOP ARTISTS”では、兵庫県出身のシンガー・ソングライター、あいみょんが見事トップに輝いた。

 音楽の聴き方は多様化した。そういった事実を踏まえたうえで、アーティストが自身の音楽をできる限り多くのリスナーへ届けたいのであれば、「どんな作品を作るべきか」を考える必要はなくとも、「どのようにして作品を発信するべきか」については考える必要があるだろう。本コラムでは、計8種のデータからなるビルボードジャパン・チャートをもとに、各アーティストをタイプ分類する。今回は2019年度上半期チャートの結果を用いて、各指標における全順位総計ポイントの中で、各アーティストの獲得ポイントの占有率を計算、その値が最も大きい指標をType1とし、以下降順でType2、Type3……と続ける。例えば“TOP ARTISTS”で堂々1位となったあいみょんは、Type1がストリーミングなので“ストリーミング型”、さらにType2は動画再生となっているので、これを“ストリーミング・動画再生型”とタイプ分類する。

ヒットの主流はいよいよストリーミングへ

<チャート構成データ>
CD=CDセールス DL=ダウンロード STRM=ストリーミング R=ラジオ
MV=動画再生 LU=ルックアップ(PC等によるCD読取数) TW=ツイート K=カラオケ

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表1:ストリーミング型

 表1は、2019年度上半期“TOP ARTISTS”において“ストリーミング型”をソート表示したものだ。トップ100入りしたアーティストで最も多かったタイプがこの“ストリーミング型”で、計26組だった。この通り、あいみょん、King Gnu、Official髭男dismなどを筆頭に、昨年から今年にかけて躍進が目覚ましい若手アーティストが上位に並んでいる。いよいよ日本でもストリーミングが浸透から定着へ、特に若年層において主流の音楽聴取メディアになってきたことが窺える結果だ。また、ONE OK ROCKやSEKAI NO OWARI、宇多田ヒカルなど、海外の音楽シーンを意識した活動を行っている国内気鋭アーティストに加え、国外のポップ・スターも多数エントリーしている。

 中でも目立つのが、ストリーミングと動画再生の親和性だ。計26組の“ストリーミング型”のうち、トップ2を含む計11組が“ストリーミング・動画再生型”となっている。つまりは “TOP ARTISTS”の1~100位までにおいても最多の組み合わせであり、これからの音楽シーンを担っていくヒット・アーティストのシンボリックな在り方であることが分かる。

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表2:動画再生型

 表2の通り、“動画再生型”の多くも“動画再生・ストリーミング型”となっており、これらの密接な相互関係は明らかだ。厳密にいえば、動画再生もストリーミングの一種ではあって、実際にUSビルボード・チャートでは区別されていないのだが、こういった実情を鑑みると、日本国内でも国外同様、ストリーミングがヒットのカギを握る時代となったことがよく分かる。

 例えばクイーンは、映画『ボヘミアン・ラプソディ』で再評価。往年のファンの呼び戻しに加え、10~30代の若い新規リスナーが増加したことは、映画と音楽の相乗効果により、有機的なエンタメ体験を提供することができたことに因る。また、TWICEやBLACKPINKも映像の訴求力が高く、『TikTok』のような動画共有アプリの存在も後押ししてか、ミュージック・ビデオやダンス・ビデオが学生たちのあいだでトレンドとなり、楽曲のヒットにも繋がった。逆に言えば、“動画再生型”でストリーミングの占有率が低いアーティスト――DA PUMP、みきとP、あるいはストリーミング配信を限定的にしているRADWIMPSなども、大きな伸びしろを秘めているであろうことは容易に予想できる。ビデオ自体のクリエイティビティに留まらず、彼らの音楽そのものが、ストリーミング時代のヒット・コンテンツとしてのポテンシャルを宿している可能性はじゅうぶんにあるのだ。

アイドル隆盛のカギを握るのは乃木坂46か

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表3:CDセールス型

 次に“CDセールス型”を見てみよう。いずれもアイドル的人気を誇るアーティストとなっている。そしてこの“CDセールス型”は、“CDセールス・ツイート型”と“CDセールス・ルックアップ型”の二つに大きく分けることができる。前者の“CDセールス・ツイート型”は、特にCDリリース週をピークとして、コア層による応援が大きな盛り上がりを見せることが特徴的。それは熱量の大きいファンのパイが大きく、なおかつ複数枚購入への施策が明確であることが多いからだ。対する“CDセールス・ルックアップ型”は、上記と似た特性を持ちつつ、ライト層への訴求も感じられ、フィジカル・セールスが牽引してヒットを生みだす、日本では長らくオーソドックスだったタイプのアーティストが並んでいる。

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表4:ルックアップ型

 欅坂46やAKB48など、秋元康が総合プロデュースを手掛けるアイドル・グループは、そのほとんどが“CDセールス型”となっているなかで、表4の通り、乃木坂46だけは“ルックアップ型”となっている。乃木坂46は、Type3にストリーミングが続いていることからも、ファン以外のライト層にまで楽曲がリーチしていることが窺える。また、ジャニーズ系グループからも、King & Princeと嵐が“ルックアップ型”としてエントリー。どちらもバラエティ番組などへの積極的な出演を通し、一般ユーザーからの興味を集め続けているグループだ。

 占有率がCDセールスよりルックアップのほうが高いアーティストは、コア層に限られがちなリリース週の盛り上がりに留まらず、様々なメディアを活用し、継続的な露出に成功している好例といえる。また、中でもType2~3にダウンロードやストリーミングが続くアーティストは、フィジカル媒体からデジタル媒体へヒットの比重が移行しつつあるタイプであり、国内音楽市場の変化に対応しようとする意図が見えてくる。ルックアップの占有率が高く、なおかつストリーミングも強い乃木坂46は、握手会などのイベント開催が大きく影響するCDセールスの販売力が大きく語られがちだが、それ以上に社会的な認知度の高さが長所であり、急激な市場の変化にも対応できている、数少ないアイドル・グループの1組だと言っていいだろう。フィジカルからデジタルへ、その変化がもはや不可逆となった今、アイドル・シーン隆盛のカギを握るのは乃木坂46かもしれない。

タイアップ効果はダウンロードに大きく影響

 それでは“CDセールス型”と同様、ユーザーの所有(≒購入)を示す“ダウンロード型”はどうだろうか。

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表5:ダウンロード型(アーティスト)

 表5の通り、“ダウンロード型”のほとんどは“ダウンロード・ルックアップ型”となっている。コレクター商品や販促物としての側面も強いCDとは異なり、純粋なる“曲への興味”から購入に至るダウンロードの場合は、同じ所有指標のCDセールスとは相関せずとも、CDレンタルとの相性は良いということだ。“ダウンロード型“に関しては、ソング・チャート“HOT 100”でもソート表示してみる。

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表6:ダウンロード型(曲)

 この通り、計12曲の“ダウンロード型”のうち、実に半分の6曲が“ダウンロード・ルックアップ型”だ。傾向としては、映像作品とのタイアップが挙げられる。米津玄師「Lemon」、back number「HAPPY BIRTHDAY」、あいみょん「ハルノヒ」、Aimer「I beg you」、そしてmilet「inside you」は、いずれもドラマや映画とのタイアップ・ソングだ。これだけメディアが多様化した現代でも、地上波テレビや映画の影響力はやはり根強く、音楽の訴求に対する貢献度も非常に高いことが窺える。そして、その影響が特に色濃く反映されるのがダウンロードであり、“ダウンロード型”に括られるアーティストは、そのマス訴求力の高い楽曲を生みだせるポテンシャルが強みだと考えていいだろう。

 なぜストリーミングではなくダウンロードなのか。月額払いで豊富なカタログにアクセスできるストリーミングでは、話題性や鮮度の高さ以上に“何度も聴きたくなる曲”であることが重要だ。これは、ノンタイアップながらも“ストリーミング型”として大ヒットしたあいみょん「マリーゴールド」が良い例だろう。一方のダウンロードは、タイアップなどを経由し、特定の楽曲に対して強い興味を持ったユーザーが利用することが予想される。ストリーミング市場の成長に伴い縮小が叫ばれるダウンロード市場ではあるが、それぞれのユーザー属性も違えば、プロモーションの切り口、あるいはアーティストや楽曲のタイプによって、やはり相性も異なるということだ。

カラオケを制すれば国民的ヒット?

 それでは、残りのタイプを一気に見てみよう。

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表7:ツイート型

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表8:カラオケ型

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表9:ラジオ型

 “ツイート型”は、音楽だけに留まらず、様々なジャンルで活躍しているアーティストが多い。幅広い層からの認知度があり、メディア露出時の話題拡散力が高いためだろう。アーティスト本人のタレント性が高いのであれば、SNSを活用したプロモーションも、他のアーティストと比べて顕著に効果が表れるはずだ。

 “カラオケ型”もまた、アーティストの認知度を分かりやすく示している。カラオケでは、来店者一人ひとりの趣味嗜好に加え、“みんな(同行者)が知っているかどうか”が選曲の基準となることが多いからだ。そのため、いわゆる“往年の名曲”をはじめ、社会的に浸透しているヒット曲がよく歌われる傾向にある。Type2以下を見てみると、ダウンロードやストリーミングといった、ライト層がアクセスしやすい指標の占有率が高いことも、その社会的浸透度を示している。つまり“カラオケ型”で上位をマークすることができれば、それは俗にいう“国民的ヒット”として捉えてもいいだろうし、逆にカラオケで歌われるような施策を組めば、CDやダウンロードの販売促進、またはストリーミングや動画の再生回数増加などを狙った施策とはまた異なる、ライト層を巻き込むことができる独自のプロモーション効果が望めそうだ。

市場変化に伴い、多様化するアーティストの在り方
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表10:各タイプに該当するアーティストの数

 最後に、2019年度上半期“TOP ARTISTS”において、各タイプに該当するアーティストの数を集計した。表12の通り、 “ストリーミング・動画再生型”が最多の11組で、次に“CDセールス・ツイート型”が9組と続く。前者はデジタル上の接触、後者はフィジカルの所有と、分かりやすく新旧のヒット・モデルが共存していることが分かる。また、3番手には“CDセールス・ルックアップ型”と“ダウンロード・ルックアップ型”、その次に“動画再生・ストリーミング型”と“カラオケ・ダウンロード型”がほとんど同数で並んでおり、一見するとカオスの様相をも呈している。冒頭で記した通り、これだけ音楽の聴き方が多様化した現代において、アーティストに求められるのは、従来のプロモーション・アプローチに囚われず、まずは自己のタイプを認識したうえで、そのタイプに基づいたマーケティングを行うこと、そしてストリーミングの台頭に代表される市場変化への対応力だ。ビルボードジャパンでは引き続き、ユーザー目線で作り上げたチャート・データを用いて、変わり続ける音楽のヒットについて検証を進めていく。

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