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ファーサイド 来日記念特集 ~90年代のヒップホップ・レジェンドに迫る

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 ジャジーでファンキーなトラックに、ユーモアを交えたシニカルなメッセージ。90年代のレジェンドとして、今もなお人気の高いファーサイドが、バンドセットでビルボードライブに登場する。彼らがなぜこれほどまでに支持され、今も影響力を持ち続けているのか。足取りを追いながら、その魅力をお伝えしよう。

 ファーサイドは、1989年にロサンゼルスで結成されている。オリジナル・メンバーは、イマーニ、ブーティ・ブラウン、ファットリップ、スリムキッドの4人。もともと彼らは80年代の終わりにダンサーとして出会い、ファンクやR&Bのアーティストとコラボレートしていた。そういった流れで、ヒップホップ・グループとしての活動を始めることになる。1991年には最初のデモをレコーディングし、レーベルとの契約までこぎつけることになった。また、デビューに先駆けて、ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズのアルバム『Heavy Rhyme Experience, Vol. 1』(1992年)に収録された「Soul Flower」にフィーチャーされ、一躍注目を集めることになった。

 そして、いよいよ1992年に満を持してファースト・アルバム『Bizarre Ride II The Pharcyde』をリリースする。本作はウェストコースト・ヒップホップの歴史において、非常に重要な作品といわれている。東海岸ではデ・ラ・ソウルのようなタイプはすでに存在していたが、当時の西海岸ではいわゆるギャングスタ系がメインであり、実際にファーサイドもバカ売れしたわけではない。ビルボードのアルバム・チャートでは75位止まりであり、Top R&B/Hip Hop Albumsでも最高位は23位だった。しかし、本作に影響を受けたアーティストは数知れず、例えばカニエ・ウェストは「最もお気に入りの一枚だ」と発言している。その評価は年々高まっているようにも感じられるのだ。





 では、なぜ『Bizarre Ride II The Pharcyde』は画期的なアルバムだったのか。まず、リリックの新鮮さが挙げられる。彼らが繰り出す言葉は時にはユーモラスであり、時には鋭い社会風刺が込められている。さらりとフロウする割には、ドキッとさせられる内容も多く、眉をひそめるような下品な言葉も随所に登場する。ふざけているように聞こえることも多いが、まさにそう思わせるのが彼らの狙いでもあるのだ。

 また、リリックに反して、センスのいいバックトラックの作り込みも絶妙だ。プロデュースに関わったJ・スウィフトの力も大きいが、ファンクやソウルをメインにサンプリングしたビートと、メンバーのラップの融合は、今聴いても新鮮に感じられるだろう。本作からカットされて最もヒットしたのは、「Passin' Me By」だ。クインシー・ジョーンズの「Summer In The City」やウェザー・リポートの「125th Street Congress」、さらにはジミ・ヘンドリックスの「Are You Experienced?」といった大ネタ使いでありながら、どこから聴いてもファーサイドらしい一曲に仕上がっている。他にも、ドナルド・バードやロイ・エアーズなどその後のサンプリング・ソースの定番となるネタ使いも多く、バックトラックだけ抜き出してみても、先駆者的存在といえるプロダクションとなっているのだ。




▲The Pharcyde - Passin' Me By (Official Music Video)



▲The Pharcyde - Runnin' (Official Music Video)


 『Bizarre Ride II The Pharcyde』の圧倒的な評価の高さに甘んじることなく、彼らは次のステップに進んでいく。3年後の1995年に発表したセカンド・アルバム『Labcabincalifornia』は、さらに新たなスタイルへと挑戦している。J・ディラやダイアモンド・Dなどをプロデュースに迎えただけでなく、ビースティ・ボーイズをゲストに迎えた「Drop」やザ・ドラマティックスをフィーチャーした「Hey You」など、さらに一歩深く新しいスタイルへ踏み込んでいる。商業的にも前作よりもチャート・アクションは良くなっており、ビルボードのアルバム・チャートでは37位、Top R&B/Hip Hop Albumsでは17位まで上昇した。




▲The Pharcyde - Drop (Official Music Video)



▲Hey You


 しかし、『Labcabincalifornia』発表後、メンバーのファットリップは脱退を表明。残ったメンバーで2000年にはサード・アルバム『Plain Rap』を発表する。本作も評価は高かったが、セールスは低迷。そしてスリムキッドも脱退し、残ったイマーニとブーティー・ブラウンの2人で4作目のアルバム『Humboldt Beginnings』を制作する。本作ではトラックメイカーにスペースボーイ・ブギー・Xを迎え、彼らの良さはそのままに、サウンド面で新基軸を打ち出した。その後はリリースが途絶えているが、ファーサイドとしてはライヴ・バンドを従え、世界中でツアーを続けている。

 今回の来日公演も、バンドセットによる彼らならではの躍動感があるステージになるはず。イマーニとブーティー・ブラウンによるクールなフロウを間近に体感しながら、90年代西海岸ヒップホップの真髄を確かめていただきたい。



▲The Pharcyde at NAMM 2018 - Live Stream Replay


 

 

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