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アラン・メンケン特集~ディズニーの名曲を生み出した名作曲家の軌跡を追う



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 『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『アラジン』『ポカホンタス 』……ディズニー・アニメーションの中でも特に高い人気を誇るこれらの音楽を手がけたひとりの名作曲家がいるーーアラン・メンケンだ。1980年代初期にミュージカル界でその名を轟かせた彼は、その後ディズニーと手を組んで、当時低迷していたディズニー暗黒期を打破する至極の名曲たちを生み出し、ディズニー・ルネッサンスと呼ばれる1990年代のディズニー第二次黄金期を支えた。近年、ディズニー・アニメーションの名作が実写化され、再び彼の功績に注目が集まっているが、『スナッチ』や『シャーロック・ホームズ』シリーズといったクライム映画で知られるガイ・リッチー監督、そしてハリウッド界きってのエンターテイナー、ウィル・スミス出演で蘇る『アラジン』の日本公開とそのサウンドトラック発売を記念して、今一度、名作曲家の軌跡を振り返ろう。

 1949年7月22日、ニューヨーク生まれのアラン・メンケン。女優/演出家の母親と歯医者でブギウギピアニストの父親、そして2人の姉妹とともに音楽に囲まれて育ったアランは、幼少期からピアノとバイオリンを習い始め、弱冠9歳でバイオリン用のオリジナル曲「Bouree」を書き上げる。ニューヨーク大学在学中からミュージカルの音楽を作っていたアランは、卒業後はロックアーティストやレコーディングアーティストになる夢を持っていたそうだが、著名な指揮者リーマン・エンゲルとワークショップで出会い、彼から音楽作りを教わったのをきっかけに、ミュージカル音楽に専念することになる。

 その後、オフブロードウェイやミニシアターで着々とキャリアを積んでいったアランは、1982年5月6日、のちにアラン、そしてブロードウェイを代表する作品となるミュージカルが上演される。ロジャー・コーマンの低予算コメディー映画をミュージカル化した『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』だ。ハワード・アシュマンが脚本/作詞、アランが作曲を担当した本作は、初演で高評価を得て、その評判が話題を呼び、連日超満員を記録した本作は、約130人キャパのWPAシアターから約350人キャパのオルフェルム劇場へと会場が格上げ。当時のオフブロードウェイ作品の最高興行記録を更新するという大ヒットを記録した。その後、5年というロングランを記録したこの作品は、『スター・ウォーズ』シリーズのヨーダ役で知られるフランク・オズを監督に招いて映画化され、【第59回アカデミー賞】<主題歌賞>にノミネート。アランの名は一気に世界中に知れ渡ることになる。本作を皮切りに、アランはハワード・アシュマンとディズニーの数々の名曲を生み出していく。

ディズニー・アニメーション映画の
ゴールデンコンビが手掛けた名曲の数々

 『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』後も、いくつかオフブロードウェイ・ミュージカルの音楽を担当したアランは、ウォルト・ディズニーが司会を務めたTVシリーズ『Disneyland(原題)』で『少女ポリアンナ』をベースにしたエピソード『Polly(原題)』の楽曲を一曲担当。そして1989年11月17日に、自身が初めて映画の作曲を担当した『リトル・マーメイド』が全米で公開される。作詞を担当したのはもちろんハワードで、本作からアリエルのお目付け役のカニのセバスチャンが歌う劇中歌「アンダー・ザ・シー」が【第62回アカデミー賞】で<主題歌賞>、【第33回グラミー賞】で<楽曲賞(映画、テレビ、その他映像部門)>を受賞。またアリエルが歌う「パート・オブ・ユア・ワールド」は、ディズニー名曲のひとつとして、公開から約30年となる現在でも世界中で歌われている。



▲「パート・オブ・ユア・ワールド」from『リトル・マーメイド』

 ここまで順風満帆のアランだったが、1991年3月14日、悲しい出来事が起こる。ハワード・アシュマンがエイズにより40歳という若さで亡くなってしまったのだ。ハワードは死の床につく直前まで、『美女と野獣』(91年)、『アラジン』(92年)の作詞を同時進行で進めていたのだが、両作品の公開を待たず、この世を去ってしまう。『美女と野獣』は、【第64回アカデミー賞】で<作曲賞>と<主題歌賞>(「美女と野獣」)を受賞。劇中歌「朝の風景」と「ひとりぼっちの晩餐会」も<主題歌賞>にノミネートと、同賞の5候補のうちのほとんどを『美女と野獣』が占めた。全世界で興行収入約425億円を叩き出し、アニメーション映画として初めてその年のオスカーの<作品賞>にノミネートされるという、ディズニーにとってもアランにとっても映画・音楽の最高峰に輝いた作品になった。



 長年の音楽パートナーであり親友を失ったアランは、ディズニー・スタジオによる『アラジン』のストーリー変更に伴う楽曲内容及び全体の音楽コンセプトの書き換えを余儀なくされる(『アラジン』ライナーノーツより、ディズニー・ファミリーの間で、この日はブラック・フライデーとして知られている)。ハワードが作詞した主題歌「ホール・ニュー・ワールド」と「ひと足お先に」をはじめとする反復曲(リプライズ)を完成させるべく、アランは大物作詞家ティム・ライスと手を組むのだが、見事完成した「ホール・ニュー・ワールド」は【第65回アカデミー賞】と【ゴールデングローブ賞】で<主題歌賞>、そして【第36回グラミー賞】では主要部門のひとつである<最優秀楽曲賞>を受賞した。ディズニー作品が音楽の祭典で同賞を獲得したのは後にも先にもこの楽曲だけだ。ピーボ・ブライソンとレジーナ・ベルと歌うポップス・バージョンは1993年3月6日付けの米ビルボード・シングル・チャートでNo.1を記録。この曲は同チャートで首位に立ったディズニー初の楽曲で、未だにその記録に続く楽曲はない。

 1995年公開のディズニー映画『ポカホンタス』の作曲も手がけることになったアランは、ティムと再びタッグを組むことを考えていたが、プロジェクトを抱え世界各地を飛び回るティムと、ニューヨークに居を構えるアランはスケジュールを合わせることが出来ずやむなく断念。そこでアランが手を組んだのが、後の音楽制作を共にすることになるスティーヴン・シュワルツだ。本作は【第68回アカデミー賞】で「カラー・オブ・ザ・ウィンド」の<主題歌賞>を含む2部門を受賞。【ゴールデングローブ賞】や【グラミー賞】など、数多の映画音楽賞を制覇し、その年を代表する映画音楽として歴史に名を残している。アランとスティーヴンは1996年の『ノートルダムの鐘』の音楽も手がけ、こちらは各賞レースで受賞に至らなかったものの、きちんとノミネート候補に上がるという成績を残した。

 翌1997年に公開された『ヘラクレス』では、アランは『シティー・オブ・エンジェル』で知られるミュージカル製作者のデヴィッド・ジッペルと組み、「ゴー・ザ・ディスタンス」やゴスペルを基調とした「ゼロ・トゥ・ヒーロー」といった名曲を生み出した。こうした偉業が認められ、アランは2001年12月5日、ウォルト・ディズニー・カンパニーに並々ならぬ貢献をもたらした人物に授与される【ディズニー・レジェンド】の仲間入りを果たす。同じ年に授与されたハワード・アシュマンとともに、アランのサインと手形は、スタジオ・シアター前の歩道に刻まれている。



▲「ゴー・ザ・ディスタンス」from『ヘラクレス』

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ミュージカル映画の再来と人気ミュージカルの誕生

 『ホーム・オン・ザ・レンジ にぎやか農場を救え!』が公開された2004年以降、アランはクリスマス映画『NOEL ノエル』、TV映画『クリスマス・キャロル』、『シャギー・ドッグ』と実写映画のスコアにシフトチェンジ。そして2007年、スティーヴン・シュワルツとともに音楽を手がけたエイミー・アダムス主演の映画『魔法にかけられて』が全米公開。アニメーションと実写を交えた本作は、ディズニー映画らしく、ミュージカルとファンタジーがふんだんに盛り込まれ、全世界興収340億円の大ヒットを記録した。劇中歌「そばにいて」や「想いを伝えて」、「歌ってお仕事」は【第80回アカデミー賞】<主題歌賞>にノミネート。『ドリームガールズ』(2006年)や『ハイスクール・ミュージカル』シリーズ(2006~2008年)といった、ミュージカル映画の再来を物語る作品のひとつとなった。



 2008年以降、アランはブロードウェイ・ミュージカルに注力し、2008年にミュージカル版『リトル・マーメイド』、2009年に英ロンドンで『天使にラブソングを…』のミュージカル版『シスター・アクト』が初演を迎える。アランはその手を止めることなく、ディズニー初の3D・CGI映画『塔の上のラプンツェル』(2010年)の音楽を手がける。ミュージカル『リトル・マーメイド』でともに仕事をしたグレン・スレイターと手を組み、主題歌「輝く未来」は【第83回アカデミー賞】<主題歌賞>にノミネートと、賞レースに必ずノミネートというお決まりのコースを辿る。



 多くのミュージカルとディズニー映画の音楽を手がけてきたアランだが、実はマーベル映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011年)と『ロッキー5/最後のドラマ』(1990年)といったヒーローものの映画の主題歌も作曲していたのをご存知だろうか? なんとも意外な作品にも思えるが、『ロッキー5』の主題歌「ザ・メジャー・オブ・ア・マン」は、なんとあのエルトン・ジョンが歌唱している。ちなみにエルトンは『ライオン・キング』(1994年)の音楽を担当し映画賞を総なめにした経歴の持ち主でもある。



 その後、再びミュージカルに復帰したアランは、ディズニー・ミュージカル『ニュージーズ』の音楽を手がけることに。本作は『ハイスクール・ミュージカル』シリーズのケニー・オルテガ監督がメガホンを取り、アランが音楽を担当した1992年公開の同名映画のミュージカル版で、ニュージャージー州のペイパーミルプレイハウスで、2011年9月下旬から約3週間という期間限定上演されたのだが、ブロードウェイの劇場からディズニーの元に「この作品を是非うちの劇場で!」とオファーが殺到し、終演後にブロードウェイのネダーランダー劇場で上演が決定するという逸話がある。その評判通り、本作は【トニー賞】で計8部門ノミネート、うち<オリジナル楽曲賞>を含む2部門を受賞した。



▲『ニュージーズ』トレイラー映像

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27年の時を越えて蘇る『アラジン』の名曲

 45年以上のキャリアの中で、【アカデミー賞】8回、【ゴールデングローブ賞】7回、【グラミー賞】11回、そして【トニー賞】、【アニー賞】、【ローレンス・オリヴィエ賞】も手にした音楽界のレジェンドが、近年手がけているのが、ディズニー・アニメーション映画を実写化した作品の劇中音楽だ。2018年に公開され、エマ・ワトソンを主演に迎えた『美女と野獣』でアランは新曲を発表したが、2019年6月7日公開の映画『アラジン』でも、彼は新曲を含めた全編楽曲の担当をしている。

 前述の通り、映画・音楽面ともに大ヒットを記録したディズニー・アニメーションの名作を27年の時を越えて蘇らせた実写版『アラジン』のメガホンを取るのは、『シャーロック・ホームズ』シリーズなどで知られるガイ・リッチー監督だ。スピードに緩急を付ける独特の撮影技法を用いるリッチー監督らしく、「ホール・ニュー・ワールド」といったおなじみの名曲のミュージカルシーンはもちろん、街中を駆け回るアクションシーンなど、アニメーション版の世界観を見事にアップグレードした魅力的なシーンが盛りだくさん。本当の自分の居場所を探す貧しい青年アラジンと、自由を求める王女ジャスミン、そして“3つの願い”を叶えることができるランプの魔人ジーニーを軸に、身分の差を越えたロマンスや友情、そして魔法のランプを巡るストーリー展開から目が離せない。

 新しい『アラジン』のサウンドトラックには、名優ロビン・ウィリアムスが演じたアニメーション版ジーニーよりもヒップホップのノリが加わったウィル・スミス版の「フレンド・ライク・ミー」や「アリ王子のお通り」が収録。劇中でウィルはほかにも「アラビアン・ナイト」やDJキャレドとのエンドソングを披露しており、その歌声はラッパー時代からの衰えを全く見せていない。



▲「フレンド・ライク・ミー」/ウィル・スミス


▲「アリ王子のお通り」/ウィル・スミス

 また、6か月にも及ぶ長期オーディションを経て見事アラジン役を掴んだカナダ人俳優メナ・マスードと、女優業の傍ら、歌手活動も行うジャスミン役のイギリス人女優ナオミ・スコットが歌う「ホール・ニュー・ワールド」、そして、本作のために書き下ろされたファン待望の新曲「スピーチレス〜心の声」も収録されている。アランが作曲した「スピーチレス〜心の声」は、作詞を『グレイテスト・ショーマン』や『ララランド』で一躍注目を集めたペンジ・パセック&ジャスティン・ポールが担当。この曲は、立ちはだかる障害にジャスミンが立ち向かう覚悟を歌った楽曲で、『グレイテスト・ショーマン』の「ディス・イズ・ミー」を彷彿させるような、聴く人の気持ちを高めてくれる力強い一曲だ。



▲「ホール・ニュー・ワールド」/メナ・マスード&ナオミ・スコット


▲「スピーチレス〜心の声」/ナオミ・スコット

 ほかにも、ZAYNとジャヴァイア・ワードによるポップス・バージョンの「ホール・ニュー・ワールド」など、アニメーション版のファンも実写版のファンも存分に楽しめるサウンドトラックになっている。アラン・メンケンが手がけたスコアも収録されており、内容十分の一枚だ。本サウンドトラックは、プレミアム吹替版キャストの中村倫也、木下晴香、山寺宏一による日本語盤と、英語盤&日本語盤をセットにしたデラックス盤の3形態で発売されるので、それぞれ聴き比べるのもおすすめだ。また封入されているアランによるライナーノーツも読み応えのあるものになっている。アニメーション映画が完成するまでのいきさつや、ブラック・フライデーによって苦汁を嘗めた楽曲を復活させたミュージカル版の誕生、そして今回のライブ・アクション映画にまつわる裏話がたくさん含んでおり、映画そして音楽に込められたアランの情熱が読み取れる。



▲「ホール・ニュー・ワールド(エンドソング)」/ZAYN&ジャヴァイア・ワード


▲「ホール・ニュー・ワールド」プレミアム吹替版MV 60秒

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