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メリッサ・モーガン来日記念特集~80年代R&B/ブラック・コンテンポラリー全盛期に活躍したディーヴァのキャリアを振り返る



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 80年代、プリンスのカバーとなった「Do Me Baby」を始め、「Fool’s Paradise」、「Love Changes」など数々のヒットを飛ばした歌姫メリッサ・モーガン。昨年、アルバムとしては12年以上ぶりの新作となる『Love Demands』を発表した彼女が、満を持して来日公演を行う。今も80sリバイバルの波が続く中、久々の来日を果たすメリッサ・モーガンについて、そのキャリアを改めて振り返ってみよう。

「Do Me Baby」で輝かしいスタートを切ったソロ・キャリア

 ジュリアード音楽院で学び、チャカ・カーンを最大の影響源に挙げるメリッサ・モーガン。ニューヨークはクイーンズ出身の彼女は、9歳でクワイアの一員となり、その歌声を磨いてきた。その確かな実力は、14歳にもならないうちに、地元のファンク・バンド=B.B.P.(ビジネス・ビフォア・プレジャー)の「(I'm In) The Prime Of Love」(78年)のボーカルに抜擢されたことからも窺える。同バンドは短命に終わったが、シェイズ・オブ・ラヴというディスコ・プロジェクトでリード・ボーカルに就任し、82年夏、「Keep In Touch (Body To Body)」がダンス・ヒットを記録。前後して、彼女はチェンジのジャック・フレッド・ペトラスに目をかけられ、ボーカル・トリオ・グループ=ハイ・ファッションの一員にもなっており、アリソン・ウィリアムスらも在籍したこのグループからは「Feelin' Lucky Lately」が人気を呼んだ。さらにこの83年は、レディ・Mを名乗って、実質的なソロ・デビューとなる「Please (Don't Break My Heart)」も登場。シックやチェンジ作品で演奏してきたアンディ・シュワルツが手がけた軽快なニューヨーク・ディスコだ。


 このように早くからソロ・シンガーとしてのポテンシャルを見せていたメリッサ・モーガンは、カシーフとのツアーや、チャカ・カーン、ホイットニー・ヒューストンらのバックコーラスを経験。メルバ・ムーアやフレディ・ジャクソンらを抱え、当時カシーフのマネジメントをしていたHush Productionsに気に入られ、Hushが提携していた関係でCapitol Recordsとのソロ契約を獲得、85年に「Do Me Baby」で正式にソロ・デビューを果たした。Hushのポール・ローレンスがアレンジを手がけたこの曲は、ご存知の通り、プリンスの81年作『Controversy』収録曲のカバー。Capitol側が「Do Me Baby」を女性シンガーに歌わせたいというアイディアをずっと温めており、メリッサに白羽の矢が立ったのだ。レーベル側の要請によるカバーだったとはいえ、素晴らしい解釈を見せたこのメリッサ版はR&Bチャート3週1位となるなどの大ヒットとなり、86年に発表されたデビュー・アルバム『Do Me Baby』もヒット。彼女のソロ・キャリアは輝かしいスタートを切った。



▲Meli’sa Morgan - Do Me Baby


 翌年には2ndアルバム『Good Love』を発表しており、この80年代後半は、「Do You Still Love Me?」、「Fool's Paradise」、「If You Can Do It: I Can Too」や、カシーフとの「Love Changes」、そして「Here Comes The Night」など数々のヒットを放つが、特記しておきたいのは、メリッサ・モーガンの良き音楽的パートナーとなったリセット・ウィルソンだ。バックコーラス時代、チャカ・カーンのバンドで当時ミュージカル・ディレクターを務めていたのがリセット・ウィルソンで、「Do You Still Love Me?」、「Fool's Paradise」などはメリッサとリセットのタッグが生んだヒット。『Do Me Baby』、『Good Love』共に、半数(以上)をメリッサ&リセットでプロデュースしており、相性抜群のコンビだった。リセットとは『Good Love』以降の90年代には疎遠になってしまうが、2005年の復活作『I Remember...』で再タッグを組み、ファンを喜ばせることになる。



▲Kahif & Meli’sa Morgan - Love Changes



▲Meli’sa Morgan - Fool’s Paradise


 その90年代。メリッサ・モーガンは、92年に4thアルバム『Still In Love With You』を発表して以降、しばし沈黙することになる。後に彼女は、90年代は難しい時代だった、と振り返っている。ヒップホップ隆盛により、業界の流れが一変し、スタイルの変化を求められたためだ。結局彼女は、結婚(93年~98年)を機に一時ブレイクを取ることを選択。一方で、96年には、ジェイ・Zの「Can't Knock The Hustle」でメアリー・J・ブライジが「Fool's Paradise」の一節を歌い、これがきっかけとなってメリッサ本人を招いたリミックスが生まれ、話題になった。



▲Jay-Z ft. Meli’sa Morgan - Can't Knock The Hustle (Fool’s Paradise)


 また、95年にはジュニア・バスケスがシェイズ・オブ・ラヴ「Keep In Touch (Body To Body)」をリミックスし、ダンス・チャート首位に輝くヒットに。これがきっかけとなったのだろう、ニューヨークのハウス・デュオ=ソウルスウィッチの「Believe In Yourself」(99年)、「Don't Say Love」(03年)でもそのパワフルな歌声を響かせている。なお、ソウルスウィッチの片割れ=ケイトー・ジョーンズは後に、『I Remember...』でハウスな「Do You, Do You Want It?」のプロデュースにも登用されている。

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 こうした客演などを経て、表舞台に戻ってきたのは2005年。Hush Productions改めOrpheusから発表された『I Remember...』は、リセット・ウィルソンをメイン・プロデューサーに据え、アシュフォード&シンプソンやフレディ・ジャクソンもゲストに招き、衰えるどころかますます深みと貫禄を見せる歌ぢからでR&Bファンを唸らせた。

 ちょうど前年にはアニタ・ベイカーも10年近い沈黙を破って再始動しており、こうした往年の歌姫たちの復活劇に胸を熱くしたファンは多いだろう。とは言え、2000年代以降は特に、R&Bを取り巻く音楽シーンの移り変わりの激しさもあって、メリッサ・モーガンの活動ペースはかなりスロウなものに。しかし、完全に休止していたわけではない。むしろ、散発的ではあったが、今の復活につながる動きをちらほらと見せていた。

 2010年には、80sディスコ~ソウルへの愛に溢れた欧州のプロジェクト=クール・ミリオンの2ndアルバム『Back For More』に参加。オープニングを飾る「Sweet Baby」で見事な歌いっぷりを聞かせ、彼らとの完璧な相性を示した(ぜひ一度クール・ミリオンのプロデュース作を出して欲しい)。そして2013年にナジー『Morning After』、2014年にフル・フォース『With Love From Our Friends』と、80年代からの付き合いの仲間の作品にゲスト参加したのを経て、2015年末には新曲「So Good」を発表。DJレニー・フォンタナが手がけた同曲は、「Get Lucky」以降の流れを明確に感じさせるディスコ・ファンクの快作で、地元ニューヨークを中心にアンダーグラウンド・ヒットとなった。彼女はこの曲を「女性版“Uptown Funk”」と形容していたが、ダフト・パンク+ファレル+ナイル・ロジャースによる2013年の「Get Lucky」、そして2014年末~2015年春にかけて一世を風靡したマーク・ロンソン+ブルーノ・マーズの「Uptown Funk」の大ヒットを受け、80sリバイバルに流れる時代の空気をしかと感じていたはず。2015年2月には、往年のR&Bアーティストたちに迫るTVドキュメンタリー・シリーズ『Unsung』に出演し、音楽活動への意欲が変わらずあることを話していたが、80年代を再評価する気運もまた、彼女の背中を押ししていただろう。



▲Cool Million ft. Meli’sa Morgan - Sweet Baby


  そして、2017年3月には、往年のR&Bアーティストの復活作に近年力を入れていることでも知られるLAのインディ・レーベル Cleopatra Recordsとのアルバム契約を発表。メリッサは、 CleopatraのサブレーベルであるGoldenlane Recordsから2010年に「Do Me Baby」の再レコーディング版、そして2015年にクリスマスEPを発表しており、このアルバム契約はその延長にあるものだ。

 こうして2018年7月に、前作『I Remember...』から実に12年以上ぶりとなるニュー・アルバム『Love Demands』がGoldenlane/Cleopatraから発表された。彼女のキャリア史上、初めてHush Productions絡みではないリリースとなったこのアルバムは、カバー6曲、オリジナル新曲6曲という構成。CD盤ではさらに「Do Me Baby」と「Fool's Paradise」のセルフ・カバーがボーナス収録される(前者は2010年に発表したものと同じ)。カバーは、アル・グリーン、サム・クック、オーティス・レディングといったクラシックを取り上げており、アリサ・フランクリン「I Never Loved A Man (The Way I Love You)」は、『I Remember...』で「Ain't No Way」を歌っていたことも思い出させる。サム・クック「Nothing Can Change This Love」のカバーと合わせ、快唱!とでも言いたくなる見事な歌が堪能できる、本作のハイライトだろう。



▲Meli’sa Morgan - Never Loved A Man (The Way I Love You)


 そう、その歌声。50を過ぎ、デビュー当初の艶やかさこそ少々欠けたが、その伸びやかな歌声は健在だし、むしろ2000年代以降はさらに力強さを増したと言えるメリッサ・モーガン。昨年のロンドンでの公演の様子を見ても、そのダイナミクスが伝わる見事な歌唱力が確認できる。6月に迫る来日公演では、サックスやバックコーラスも含む8人編成のバンドと共にパフォーマンスを披露する予定だ。そのミュージカル・ディレクターを務めるディヴァーン・ウィリアムスは、Salsoul初の女性アーティストとなったことで知られるディスコ・クイーン、キャロル・ウィリアムスの息子。メリッサにとってはジュリアードの後輩にあたる彼は、60s~90sのソウル~ファンク~R&Bを得意とするディヴァ―ン&ヴィンテージソウルというバンドを率いており、今回のバンド・メンバーは、近年メリッサのバックを務めることも多いこのヴィンテージソウルの面々を中心とした編成となるようで、メリッサとの息もぴったりのはず。往年のヒットを披露することもしっかりと予告されるこの来日公演、メリッサ・モーガンの歌声と共に煌びやかな“ブラコン”の世界を存分に味わる夜となりそうだ。



▲Meli’sa Morgan with Deverne & vintagesoul (2018 live)


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