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ブランドン・コールマン来日記念特集 ~新世代LAの鬼才鍵盤奏者、そのユニークな魅力を高橋健太郎が解説。

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 現代音楽シーンの台風の目として大きな影響力を誇る新世代LA勢。その最前線を牽引する鬼才キーボーディスト、ブランドン・コールマンの来日ツアーがいよいよ今月末から開催される。盟友カマシ・ワシントンをはじめ、数多のセッションに参加してきた腕利きの鍵盤奏者である彼は、自らもアーティストとして活動。2018年には現時点での代表作と呼ぶべき最新作『Resistance』をリリースし、さらなる注目を集めることとなった。

 今回、Billboard JAPANでは音楽評論家の高橋健太郎氏に、そんなブランドン・コールマンの解説を依頼。メディア上で「2018年の年間ベスト」に前述の『Resistance』を挙げていた高橋氏に、ブランドンの音楽の魅力について改めて綴って貰った。来日公演に向けて、ぜひご一読頂きたい。

“アーティスト”として飛躍を果たした
『Resistance』というアルバム

 カマシ・ワシントン、フライング・ロータス、サンダーキャット、ミゲル・アットウッド・ファーガソンなどと縦横にセッションを重ねているキーボード奏者、ブランドン・コールマンは、米西海岸のジャズ・シーンあるいはビート・ミュージック・シーンを追いかけている人にはすでにお馴染みの顔だろう。サンダーキャットや彼の兄のロナルド・ブルーナー・ジュニアとは中学校時代から、カマシ・ワシントンとは高校時代からの友人だというコールマンは、鍵盤を弾き始めたのは15歳と遅かったが、ロスアンジェルスのコルバーン・スクール・フォー・パフォーミング・アーツに進学。2000年代の半ばにはローカルなジャズ・シーンに頭角を現わしている。
 2009年にはカルロス・ニーニョのビルド・アン・アークに参加。そこで共演したミゲル・アットウッド・ファーガソンの紹介でフライング・ロータスと知り合い、フライング・ロータスの2012年のアルバム『Until The Quiet Comes』に参加して、注目されるようになる。2013年には最初のソロ・アルバム『Self Taught』を自主制作している。


▲BRANDON COLEMAN - 'Gotta Be Me'(from Self Taught)

 そんな経歴からすれば、2018年にフライング・ロータスが主宰するブレインフィーダーとブランドン・コールマンが契約を結んだのは自然な流れに思われる。だが、同年夏に発表されたアルバム『Resistance』は想像をはるかに超えた渾身作だった。コールマンはミュージシャンからアーティストへの飛躍を果たし、トータルな構成美を持つアルバムの中に彼の音楽への愛を存分に表現した。2018年の後半、僕は狂喜乱舞しながら、そんな『Resistance』をヘヴィーローテーションしていた。

CD
▲『Resistance』

 制約を設けず、自由に音楽を作ることをめざして、『Resistance』というタイトルを冠したとコールマンは語っている。その結果、『Resistance』は彼の子供時代からの音楽遍歴を躊躇なく反映したアルバムになったようだ。コールマンのキーボード・プレイがジャズ的なハーモニーを駆使したものなのは言うまでもない。だが、『レジタンス』から何よりも強烈に伝わってくるのは、彼の身体に根づいたファンクやブギーのフィーリングだ。インストゥルメンタル曲はひとつもなく、全編にコールマンのヴォコーダー・ヴォーカルやゲスト・シンガーの歌唱をフィーチュア。冒頭のシンフォニックなディスコ・チューン、「Live For Today」から、ラストの切々としたバラード、「Walk Free」までのめくるめく展開は、壮大で、荒唐無稽で、時に時代錯誤的ですらある。だが、やりたいことをやりきったコールマンの音楽は奇跡的なまでのポップな美しさに到達している。それが『Resistance』というアルバムだ。

 コールマンに影響を与えたと思われる先人達の名前を数え上げるのは難しくない。まずはハービー・ハンコック。そして、ジョージ・デューク。彼らもまたジャズとファンクのフィーリングを併せ持ち、ポップでダンサブルな音楽を作り上げる達人だった。加えて、ザップのロジャー・トラウトマン。5曲目の「Sexy」などはまさしくザップを彷彿とさせるハンドクラップの効いたファンク・チューンだ。そういえば、2018年に終わりにCharaが発表したアルバム『Baby Bamp』の冒頭が同じくザップの影響をストレートに表したファンク・チューンで、ブランドン・コールマンの『Resistance』との共時性に興味惹かれてしまった。


▲Zapp - Dance Floor

 「A Letter To My Buggers」や「Love」のポップ性にスティーヴィー・ワンダーの、「Sandae」や「Just Reach For Stars」のスペーシーなサウンドにアース・ウィンド&ファイアーの影を見出すのもたやすい。さらにはパーラメント=ファンカデリックやカメオやファットバックといった名前を思い出したりもするが、ふと考えてみると、ブランドン・コールマンは80年代生まれ。70年代のファンクやブギーにここまで精通しているのは不思議とも言える。
 逆からいえば、世代的に最も影響が大きいはずのヒップホップの匂いはあまりしない。あるいは、DJ的なオタクっぽさも感じられない。ベッドルーム・ファンクではなく、極めて自然に肉体化されたダンス・グルーヴが空間に溢れ出す。それはライヴ・シーンでの豊富な活動経験ゆえのものかもしれない。ヘッドフォンで聴き込むと、何重にもレイヤー化されたキーボード類の繊細さに驚かされるが、それも精密にデザインされたというよりは、スポンテイニアスな演奏の積み重ねから生まれているように思われる。

 『Resistance』からは3曲のミュージック・ヴィデオがYouTubeにアップされているが、これもブランドン・コールマンの進もうとしている道を示すかのようだ。「All Around The World」は一人二役のドラマ仕立てで始まり、ビーチで美女達と戯れたり、崖の上でショルダー・キーボードを弾いたりするコールマンのお調子者ぶりが可愛らしい。「Walk Free」はSFコミック仕立てのアニメーション。こんな展開はジャズ・ミュージシャンのヴィデオにはまず見られない。ブレインフィーダーの一員となったコールマンがポップ・アーティストとして勝負に出ているのがよく分かる。


▲Brandon Coleman - 'All Around The World'

 一方で、シンガーのパトリース・クィンとドラマーのテックディズルをフィーチュアリングした「Giant Feeling」のミュージック・ヴィデオはオーガニックな作りで、スピリチュアルな暖かさを感じさせる。この曲は実質的にカマシ・ワシントンのグループによる演奏で、ロスアンジェルスのミュージシャン・コミュニティーに抱かれたコールマンの姿を強く印象づけるものでもある。この曲があることによって、『Resistance』というアルバムもぐっと締まっている。一方では軽佻浮薄なポップ・アプローチを見せながら、一方ではシリアスな音楽への愛に身を捧げる。そんなブランドン・コールマンロマンとユーモアを併せ持ったキャラクターにも僕は魅せられている。『Resistance』発表後のライヴ・パフォーマンスではそれがどんな形で眼前に展開するのだろうか。考えただけでもワクワクしてくる。


▲Brandon Coleman - 'Giant Feelings (feat. Patrice Quinn & Techdizzle)'

Text:高橋健太郎

ブランドン・コールマン「Resistance」

Resistance

2018/09/14 RELEASE
BRC-573 ¥ 2,376(税込)

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