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インターポール 来日インタビュー~ダニエルが語る最新作『Marauder』とバンドの歩み

来日インタビュー

 2002年にリリースされたデビュー作にして、00年代の米NYロック・シーンを代表する名盤『ターン・オン・ザ・ブライト・ライツ』から約16年、結成20年という節目を迎えたインタポールが、6作目となるスタジオ作『Marauder』を2018年8月24日にリリースした。

 マーキュリー・レヴ、フレーミング・リップスらを手掛けた名プロデューサー、デイヴ・フリッドマンとタッグを組み、アナログ・レコーディングで制作された今作は、彼らの漲るエネルギーと尽きることない探究心に培われた、バンドの新章の始まりが感じられる力作となっている。今作のプロモーションのために、ギタリストのダニエル・ケスラーが8月上旬に来日。新作についてはもちろん、バンドの結成時を振り返るとともに、今後の活動へかける想いを語ってくれた。

TOP Photo: Jamie James Medina

このアルバムのサウンドは、とてもアナログらしくて、生き生きしている

−−インターポールの楽曲制作は主にダニエルからスタートし、形になっていくそうですが、最新作『Marauder』にはいつ頃から着手していたのですか?

ダニエル・ケスラー:ソングライティングは、いつも自然の成り行きに任せてる。前作『エル・ピントール』のツアーを2015年後半に終えて少し経ったら、曲やアイディアが自然と浮かんできたんだ。2015年の終わりから2016年のほとんどは曲を書き溜めていた。その段階では特に無理強いせず、感じたものを形にしていく。ツアーをしている時は、ソングライティングを拒絶してる部分があるんだけど、そのフェーズが終わると「さぁ、曲作りしよう」っていうエネルギーがふつふつと沸いてきて、曲が浮かんでくるんだ。

 そして2016年の終わりに、ポール(・バンクス)に何曲が聴いてもらった。最初に聴かせたのは「The Rover」というか、その“原石”だったかな。それとオープニング・トラックの「If You Really Love Nothing」。そしたら彼が即座にベースラインを思いつき、ヴォーカル・メロディを肉付けしていった。これがニュー・アルバム制作において新たなフェーズの始まりだ、というのは一目瞭然だったね。今回は物事の進み具合からエネルギーが感じられた。曲も生き生きとして、即時性があって、それをそのまま捉えたかったんだ。そこには否定できない魅力があったから。

−−そのエネルギーの原動力となったのは具体的に何だったのでしょうか?

ダニエル:曲のヴァイブが大きいかな。後、お互い私生活の面で…バンド・メンバー間ではないよ、ちょっと切迫していたのもあると思う。悪い意味じゃなくてね。アルバムを作るというのは、アートを通じて自分たちを表現する機会で、感情とその発散は不可欠だ。僕にとって、そうすることは、コンセプト・アルバムを作るより簡単なことなんだ。何かに合わせて作品を作り上げるのは、何となく自分を偽っているような気がするから。僕が曲を書くのは、何かを吐き出したい、発散したいからなんだ。そうすることで気持ちが満たされる。渇を癒してくれて、満足させてくれるんだ。



▲ 「If You Really Love Nothing」MV


−−その点では、新作と前作のリリースの間にダニエルは、ジョセフ・フライオリとともにビッグ・ノーブル名義でアルバムを発表していました。

ダニエル:このアルバムの曲は、『エル・ピントール』の制作中に平行して書いていたものなんだ。サウンド・デザイナーの友達であるジョセフと、僕の家でレコーディングして作ったアルバムなんだけど、すごく面白い、有意義なプロジェクトだった。

−−このプロジェクトが新作に与えた影響はありますか?収録されている2曲のインタールードの音世界と似ているな、と思って。

ダニエル:いや、あの2曲はほぼサム(・フォガリーノ)とデイヴ(・フリッドマン)が中心となって作ったものなんだ。だから、アルバムに直接的な影響はなかったと思う。ただ、僕は映画音楽やアンビエントな音楽が大好きで、ものすごく影響されている。普段から好んで聴いていて、多分いわゆる“ロック”と呼ばれる音楽よりも頻繁に聴いているんだ。ビッグ・ノーブルとインターポールを両方やることで、カタルシスを感じたのは確かだね。今後も継続的にビッグ・ノーブルとしての活動は続けていきたいし、将来的にはジョセフと映画のスコアを制作できたらいいな、とも思っているんだ。



▲ 「PEG」MV


−−同時期にポールもRZAとプロジェクトを進行していましたが、その影響が今作の彼のソングライティングから幾分か感じられましたか?

ダニエル:う~ん、どうだろう。多分ないと思うな。これまでのインターポールの活動でもそうだったけど、ポールは彼らしくない、面白いことを安易にやってのけるタイプなんだ。元々彼はヒップホップが大好きで、今でもほぼそういう音楽ばかり聴いている。そんな彼が、自分にとってヒーローのような存在のRZAと仕事をする機会を与えられたわけだから、短期プロジェクトとしてではなく、2人で一緒に長い時間をかけて打ち込んでいた。僕の感覚としては、インターポールはインターポール、その他はその他って、きちんと棲み分けができてる。とはいえ、ヒップホップは彼に多大な影響を与えているから、無意識に作品に投影されているかもしれない。けれど、それが意識的なものなのかはわからないな。ヒップホップのリリックを熱心に聴いてたりはするけど。

−−今回久しぶりに外部のプロデューサーを起用することになった経緯とデイヴ・フリッドマンを選んだ理由を教えてください。

ダニエル:常にオープンであろうという取り組みの一環としてかな。ソングライティングも順調だったし、自分たちでプロデュースすることも可能で、バンド間でその可能性についても話し合ったんだ。でも最終的には、誰かをプロセスに招き入れた方が曲の良さを引き出してくれるのでは、自分たちも何か新たな発見があるかもしれない、それを恐れずにオープンになろう、という結論に辿り着いた。タイミング的にも丁度いい時期だったしね。

 デイヴの名前が挙がった時、きっと興味深いコラボになる、とバンド全員の意見が合致した。彼は、様々な作品を手掛けていて、似た作品は一つもない。僕としては、デイヴが手掛けたテーム・インパラ、MGMT、そしてフレーミング・リップス…彼らに関しては30年近く作品に携わっているよね…マーキュリー・レヴ、モグワイの作品が好きなんだけど、きちんと個々のバンドのサウンドを聴いて、そのアルバムの目的を理解していると思える仕上がりになっている。作品によってアプローチを変えているのが明らかだし、僕らとコラボしたら、どんなものが出来上がるんだろう、ってワクワクさせられた。彼との仕事は、本当に素晴らしかったよ。

 逆に、彼が今回の仕事を引き受けてくれたのは、送った曲のリハーサル音源に最初と最後があり、すでにきちんと僕たちがそれを演奏できてたから。特に今の時代だと、何でもデジタル処理できるから。録音ボタンを押したらすぐにでもレコーディングできる、という準備万端な僕らのスタンスを気に入ってくれたんだと思う。曲の構造に関しても、方向性を好んでたし。彼の一番の貢献というのは、アナログでレコーディングする手ほどきをしてくれたこと。このアルバムのサウンドは、とてもアナログらしくて、生き生きしているから。



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−−ダニエルにとってアナログ・テープでレコーディングすることの魅了とは?テープに録音するのはデビュー作の『ターン・オン・ザ・ブライト・ライツ』(TOTBL)以来ですか?

ダニエル:これまでのアルバムすべて、多少はテープにレコーディングしているんだ。主にドラムとベースはね。『TOTBL』の時は、ほぼ全部テープに録音したよ。時代的に、ProToolsが目新しいもので、そこまで普及していなかったから。反対に、今テープは物珍しいものになってしまった。ProToolsやデジタル機器をを駆使すれば、何でもできるし、好きなだけ“完璧”にすることが可能だ。けれど、テープに録音する方がユニークだし、アナログならではの温かみがある。エルヴィスの時代よりも前の古き良き音楽のレコーディング技法で、スタジオ内での“瞬間”をみんなに聴いてもらえることが可能になる。でもその“瞬間”を捉えることができる反面、レコーディングできるトラックに制限がある。アルバムに収録されているのは、1、2回で録音したギターのテイクなんだ。そのためには入念にリハーサルしなければならないから、この方法でレコーディングできるバンド自体少なくなってきている。それが悪いことだと言っているわけではない。今は曲を各パーツごとにつなげて、形にしていくのが主流だ。だから、デイヴもこれが稀な機会だと悟ったんだと思う。事前に100回以上練習したから、気持ちにゆとりを持って取り組むことができて、僕たち自身にとってもクールな経験になった。いざレコーディングして、「今のギターは良かった」っていいテイクを5分で完成させることもあって、そこへ到達するまでに2~4年かけたものが、たったの5分で仕上がって、歴史に刻まれるのはワイルドで、エキサイティングだったね。

−−こういったレコーディング方法だと、予期していなかった、または偶発的な出来事が起こる余地が増えると思います。たとえば、「Stella Was a Diver and She Was Always Down」は、ポールが氷を口に含んで話しているのを冒頭にそのまま使っていますが、新作ではそういったものはありましたが?

ダニエル:色々あったよ。むしろ間違いなのに、チャーミングに感じるようなものすらあったよ。“間違い”というより、予期していなかったことだね。でもそれが何かというのは、あまり言いたくないないんだ。言った途端に、みんながそこばかり気にしてしまうのも嫌だから。君が指摘した氷のことも、話したことはなかったと思ったけど、それを知るとなんだかチャーミングだと感じるよね。今回もそういうのがいくつかあるけど、ものすごく細かいディテールで、氷のよりは分かりにくいかな。



 あえて言うなら「Number 10」は、アルバムに収録するつもりではなくて、一番最後にレコーディングした曲だった。それも、ものすごいスピードで。ギターラインはポールがインプロヴィゼーションしたもので、ヴォーカルも曲をミキシングしていた時に書いたものだ。どう考えてもアルバムに収録されるはずではなかった曲で、ギリギリで完成させたんだけど、なんだかキャッチーで病みつきになってしまい、エネルギーも良かったし、アルバムの他の曲とは異なっていたから、最終的には入れなきゃということになったんだ。新作に収録されなかった曲はいくつかあるんだけど、スタジオに入る前に、どの曲が収録されて、どれが収録されないか、当てなきゃいけなかったとしたら、僕は全然見当違いな曲を選んでたよ。これはBサイドだな、と思ってたものがスタジオに入ったら開花して、アルバムに収録されることになったりしたから。でも、僕らとてもオープンだから、それを受け入れたんだ。

−−そこがレコーディングの面白さのひとつでありますよね。

ダニエル:うん。でも、それがいつも起こるとは限らないし、やや異例かもね。決めたプランにこだわりすぎて「この曲は絶対に収録しないと」って頑張っても、そうすることで客観性を失ってしまう。当初のプランから変わっても臨機応変に対応できないと。ものすごく気に入ってた曲があって、今回のアルバムに収録出来なくても、今後適した機会が出てくるかもしれないしね。




▲ 「Number 10」MV

−−―収録曲の中に、テンポがややズレていたり、外れていたりする部分が随所にあるのは意図的だったのですか?

ダニエル:その瞬間に存在することを重視して、完璧なテンポとか、色々なことを意識しないようにした。もし完璧なテンポで演奏したかったら、クリックに合わせて演奏すればいい。クリックに合わせて演奏してる曲もいくつかあるけど、それを取り除いたほうがいい曲になるのであれば、抵抗はなかった。テンポが若干行ったり来たりするのには、意図があるんだ。その方がライブ・ロック・バンドらしい演奏になるし。

−−今の話は「The Rover」に通ずるような気がしますね。

ダニエル:あの曲は、まさにバンドが一緒にプレイしている一体感とエネルギーがあるよね。ライブを観に行くと大半のバンドはクリックに合わせて演奏していてテンポが完璧だけど、この曲はクリックなしで演奏した。僕自身、聴いている時に特に違和感は感じないな。レコーディングで捉えた、生き生きとした、アップビートなサウンドがそのまま再現されているから。ロックンロール・ショーは、そうでなきゃいけないと思う。その瞬間を生きて、何が起こるか予測できないようなものじゃないと。

−−その反対に、アルバムを締めくくる「It Probably Matters」は 、情緒的でメランコリーなクロージング曲ですが、ポールによるとこの曲を収録するのをダニエルは躊躇したようですが…。

ダニエル:いや、あの曲は気に入ってるよ(笑)。ただ、この曲がアルバムの目的に合っているかわからなかったんだ。最終的には、入れたいと思った曲だ。多分、残りのメンバーも曲はいいけど、他の曲に比べると…、って感じだったと思う。僕は、個人的に長いアルバムは作りたくない。多くのことに関してそうだけど“レス・イズ・モア”派だ。だから、この曲を入れた方がいいアルバムになるか、何を伝えたいのかを考える必要があった。疑念を抱いていたのは僕だけじゃなかったと思う。この曲もスタジオで強いカムバックを果たした曲だというのは確かだね。アルバムの最後に持ってきたらいいんじゃないか、というのはポールのアイディアだった。これは正論だし、いいクロージング曲だと思う。この曲でもデイヴがものすごく活躍してくれた。特にブリッジの部分で。スタジオに入る前、崩れ行くようなイメージを思い描いていたんだ。スタジオ入りした時に、デイヴがクールなディテールのアイディアをくれて、それが曲が終わる直前の強いドライヴ感を持たせてくれたんだ。




−−加えて、この曲の前に「Interlude 2」が来ることで、より曲を際立たせているような気がします。

ダニエル:それは当たってると思う。

−−曲は人間関係、恋愛関係についてだと思いますが、アートや人生そのものにも当てはまる、一番最後のリリックも印象的でした。

ダニエル:その通り。曲の“主人公”に関係した具体的なシチュエーションについて書かれたものだと予想してるけど、人生や色々なものに当てはめることができる。これはポールが書く詞の多くから見受けられる特性だと思う。自分の人生と照らし合わせることで、彼が意図していなかった捉え方もできる。特に若い人は、その時に人生に置かれた状況によって、自分なりに歌詞を解釈することがあるけれど、それって嬉しいことなんだ。ソングライターが意図した意味よりも、その曲や詞がリスナーに何を与え、どんな意味を持つか、ということの方が価値があるし、そこが音楽の美しさでもあるんだ。

−−ダニエル自身、新作の中で響いた詞はありますか?

ダニエル:ポールは、今回ものすごくいい仕事をしてくれたと感じてる。とてもフォーカスし、何十年経っても色褪せない詞を書くことにコミットしていた。紛れもなくそれを成し遂げた作品だと思うから、彼自身もそう思ってるといいけど。正直な話、たくさんありすぎるな…(しばらく考える)。「Stay In Touch」の「That’s how you make a ghost~」の部分は好きだね。彼の歌い方も最高で、とてもパワフルな曲だと思う。




−−デビュー当時から現在まで、“ミニマリスト”という言葉は、インターポールの音楽性を形容する上で不可欠なような気がします。これはバンド自身も、作品づくりを行う上で意識していることでしょうか?

ダニエル:そうだね。これは人生全般においても意識していること。僕は、自分をミニマリストだと思っている。物事を簡単にしてくれるから。

−−簡潔にした分、表現の幅が制限される場合もあるような気もします。

ダニエル:確かにね。このアルバムは、ダイナミズムとディテールに富んだ作品だけど、それを表現するために台所のシンクを投げるような、大胆なことをしてるわけではないし、何かが多ければ多い方がいいというものでは決してない。新作は、これまで作ってきた作品の中…、それか『TOTBL』以来、最もキーボードのパートが少なくて、いくつかの曲でしか使っていない。

−−ギターもややシンプルで、空間が生かされた構造に仕上がっています。

ダニエル:テープにレコーディングしたことで、あまりギターをレイヤーをしてないからね。普段からそこまでレイヤーしてるわけではないけど。まばらだけど、エネルギーがある。ミニマリストだけど、ステレオで聴いた時、即座に引き付けられるサウンドになっている。ギターが少ないからと言って、ダイナミズムが減ったわけではないし、パンチの効いた作品だ。レイヤーすることで安心感を持ったり、その美学というものも、もちろん存在して、過去に曲がそれを必要していた時はそうしている。でも特に今作はミニマルにすることがしっくりきた。それがクールな仕上がりにしてくれ、ものすごくライブ感のある作品になっている。

−−先日公開されたばかりの「Number 10」はイントロから曲への導入、また「Flight Of Fancy」のアウトロなどはギターがとてもダイナミックな曲です。

ダニエル:「Flight Of Fancy」は、それを意図して書いたんだ。この曲はコード進行とヴァースが風変りで、ポールと時間をかけて色々な視点から曲を分析して、アウトロ部分においては変わったコンセプトを思いついた。だからコードの構造がユニークなんだ。5~6シークエンス、ずっと1コードづつ減らし、反復するようになるまで続けた。この曲もアルバムに収録されないと思ってた曲だった。アウトロの正当化が長い間できなかったから。でもレコーディングの終盤になって、曲でリード・ギターを弾いているポールがその解決策をみつけ、スタジオで見事に形になったんだ。特にこの曲のミックスはものすごく評価してて、デイヴがいい仕事をしてくれたと思う。最終的に否定できないほどいい曲になったから、アルバムの中に場所を見つけなきゃ、ってことになったんだよ。




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−−話は変わって、『TOTBL』の15周年ツアーを行うきっかけとなったのは?

ダニエル:新作の制作を進めてた時に、『TOTBL』の15周年の話題になって、ツアーをやったらどうか、というアイディアが上がったんだ。メンバー全員深く考えずに、単純に楽しそうだったから、やることにした。アルバム制作中にツアーをしたことがなかったし。新作のライティングは、ほぼ終わってて、リハーサルをしていた頃だったから、内容には影響を与えなかった。結果として、4か月間ぐらいアルバムのことを考えなくて済んで、デイヴもそうさせてくれた。ツアーから戻ってきて、レコーディングまで1週間程あったんだけど、新曲にすぐに慣れて、いい手ごたえを感じたから、これがインターポールにとって次の章なんだ、この方向に進みたいんだって確信させてくれた。これが『TOTBL』のツアーを行ったことによる主な恩恵だな。

 それと、思っていたよりみんなが楽しみにしてくれていたのにビックリした。アルバムがリリースされた時には、もしかしたらまだ生まれていなかったかもしれないティーンエイジャーやリアルタイムで聴いていた人がみんな観に来てくれてた。それって今の不思議な“デジタル時代”では、稀なことだと思う。

−−その“デジタル時代”は、 音楽をシングル単位で消費することを加速させていますが、そんな中でアルバムを作り続ける意義とは?

ダニエル:僕らは、トレンドに乗ったり、時代に合わせて変化しようとしてない…いい意味、悪い意味で。アルバムというフォーマットは、僕たちにとって最も適した表現形式だ。そして自分たちのために、自分たちを満足させるために作っていて、そこにまずみんなが惹かれたと考えている。僕は、自分自身が満足できる作品を作れば、リスナーもきっと気に入ってくれると信じてる。みんなに気に入ってもらうにはどんな作品を作ったらいいか考えたり…それがダメだっていうわけじゃないけど、それだと不確かな部分があって、ピュアじゃない気がする。僕らが作る曲は、どの曲も単体で独り立ちできる力は持っていると思うけど、それを一つのアルバムにすることで、さらにパワフルになる。いかにもヒットしそうなシングルを書くことはしてないしね。

−−とはいえ、「The Rover」はインパクトのある1stシングルでした(笑)。

ダニエル:ありがとう。あの曲は当初シングルになる予定ではなくて、自然とそうなったんだ。もしアルバムをリリースし続ける以外の方法で、芸術的に筋が通るのであれば、そうするかもしれない。時代に合わせて、という理由で何かをやることは絶対にない。今いるファンたちの大半も僕たちが“アルバム・バンド”だから好きなんだと思う。インターポールのライブに来た人に「どの曲が好き?」って聞いたら、多分15曲ぐらいの違う答えが返ってきて、その中の全部がシングル曲ではなく、通なセレクトをする人もいるだろう。好きな曲だけをプレイリストに入れて聴きたいのであれば、そうすればいい。アルバムは、バンドが自ら曲のシークエンスとペースを考えているから、言わば僕たちのプレイリストだ。3~4年おきにアルバムをリリースしているけれど、毎回音楽業界が変わっているから、今から4年後はどうなっているかわからないしね。



▲ 「The Rover」MV

−−では、アルバムを作るときに最も重要視しているのは?

ダニエル:常に油断をせず、辛抱強くあること。作業を終えてスタジオを出るときに、元々の目的を犠牲にしていないか。それがもっといい目的につながっているのであれば、それでもいいと思うけど。他の誰かを満足させるために、自分の信念を曲げてはいけない。幸運にも、僕たちはお互いを信頼している。たまに意見の食い違いもあるけれど、 それはどちらかが間違っているわけではないし、何かしらの決断は下さなければならない。そういうシチュエーションのが多いかな。

 今回のレコーディングはすごくいい雰囲気で進んだ。デイヴが、アルバムにとって最良の方向へ導いてくれたことも良かった。アルバムは、リハーサル・スペースで書いていた作品より、数億倍いい作品に聴こえる。元々あった生き生きとしたフィーリングと即時性のエッセンスを、とにかく素晴らしい方法でデイヴが捉えてくれて、その質を高めてくれたんだ。リハーサル・スペースで鳴らしていたサウンドが、よりダイナミックになり、ディテールがプラスされるとともに、僕らの強みを最大限に引き出してくれた。

−−これまでのキャリアを振り返ってみて、どんなことを感じますか?20年前に結成された時に思い描いていたものと相違はありますか?

ダニエル:僕にとってこのバンドをスタートするのは、とても困難だった。バンドをやること自体がハードではなくて、メンバーを見つけるのにとても時間がかかった。インターポールのようなバンドを始めるという野望があって、演奏力に関係なく、強い個性と感性を持ったメンバーとコラボすることを望んでいた。例えば、カルロス(・D)の場合は、同じ授業を受講していた時に気になって、好きな音楽も多少被っていたけど、彼が楽器を演奏するかも知らなかった。ポールに関しても同じだね。当時彼は、高校を卒業したての18歳の青年で、彼の成熟さ、自信のある立ち振る舞いに惹かれた。正直な話、みんな美的センスも異なっているし。

 僕だって、ものすごく腕のいいギタリストなわけじゃないけど、自分なりの感性や短所、表現したいディテールやスタイルがある。各メンバーのそういった部分に惹かれるんだ。インターポールというバンドは、今でもお互いを刺激し合っている。バンドを結成する前、自分でドラム以外のパートをすべてレコーディングしたことがあるんだけど、思い描いていたものと全く同じものが出来上がった。それがダメというわけではないんだけど、もっと予想できないものが作りたかった。それを実現し、僕なりのコンセプトに沿うメンバー探しには苦労したけど、20年後にもこうやって活動を続けられているのは幸運だとしか言えない。元々うまくいくはずじゃないプロジェクトだったのに。その点では、僕が望んでいたことではあるけれど、自分の期待を遥かに越したキャリアを歩んでこれた。1stアルバムだって、作るのにとても時間のかかった作品だったけれど、それから十数年後の今、6作目のアルバムについて話している。すごくクレイジーで、恵まれていると感じるね。特に今はとても活気に満ちていて、このアルバムに対しても奮い立っている。こういう感情は、貴重になりつつあるから、当たり前だとは思いたくない。メンバー全員、これまでで最も“今に在る”というスタンスで、音楽と真摯に向き合っていて、今後もそうし続けていきたい。

−−そう感じるきっかけとなったのは?単純にタイミングの問題でしょうか。

ダニエル:タイミングもあるし、今も自分たちを表現できる機会を与えられていること。コミュニケーションも円滑になっている。カルロスがバンドを脱退したことで、3ピースになって、ポールが埋めなければいけない大きな穴ができた。『エル・ピントール』でポールがベースを弾き始めたことで、何もかもが新しく感じたし、多くの発見があって、ソングライティングにおいても新たなフェーズに突入した。そのプロセスが楽しめ、自信がついたことを軸に、『Marauder』は作られた。僕たちにとって未来は明るいと感じるし、真新しいという心持ちだね。

−−では最後にダニエルの夏の一曲を教えてください。

ダニエル:昔の曲なんだけど、エルヴィスのドキュメンタリーを観ていて…この曲をそれまでちゃんと聴いたことがなかったのが不思議なくらい。彼の「Crawfish」という曲で、泥臭い、情熱的でセクシーな夏にピッタリな一曲だ。彼が出演している映画(『キング・クレオール』)の中で歌われている曲で、彼自身にとってとても思い入れの深い映画だったみたいなんだ。2分半ぐらいの短い曲なんだけど、詞も最高だし、曲のヴァイブやエッセンスにも惹かれる。タイトルはザリガニだから、ルイジアナ州とかのイメージが沸くね。気に入ってる一曲だよ。






インターポール「Marauder」

Marauder

2018/08/24 RELEASE
OLE-11243 ¥ 2,376(税込)

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