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トイレでの出会いからグラミー賞へ 「テイク6」



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 1988年のデビュー以来、グラミー賞10冠、一昨年のアルバム『Believe』は全米ジャズ・チャート2位を記録するなど、今なお最高峰のヴォーカル・グループとして君臨するテイク6。後進に多大な影響を与え続ける彼らを、一人アカペラ作品で活躍する、“よう いんひょく”が迫る。

vol.1:彼らのライブで、アカペラライブのイメージは変わる。「ロッカペラ」の“ステージ”

vol.2:「黒さ」が印象悪いなら、音楽やりません。「サウンズ・オブ・ブラックネス」

vol.3:“リズムを楽しむ”とは、こういうことか?「タキシード」

アカペラの神「TAKE6」


  本当はこんなに安っぽい言葉を彼らに使いたくはない。彼らは単なるアカペラ・グループではないのだ。彼らの音楽は、音楽に存在するハーモニー全体に衝撃を与えた。

 近年、米出身のアカペラグループ・ペンタトニックスなど、若くてエネルギッシュなアカペラ・グループの尽力により、アカペラという音楽が世の中に触れる機会が増えたように感じる。それでも、「アカペラ史上一番素晴らしい曲は?」と聞かれたら、私は間違いなくテイク・シックスの「アイ・ガット・ライフ」を答えるだろう。それほどに彼らのサウンドは独創的で、今でも他のグループには真似できない唯一無二のサウンドを持っている。テイク・シックスの音楽を隅々まで聴き、10年以上彼らの音楽を歌ってきた私から、ぜひ彼らを紹介させて欲しい。

トイレでの出会いからグラミー賞へ

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 彼らの出会いは、1980年、米アラバマ州オークウッド大学のトイレから始まる。当時お金に余裕がなかったテイク・シックスのリーダー、クロード・マックナイトは、4人編成のアカペラ・グループのリハーサルをよく学校のトイレでしていた。偶然そのリハーサル現場に遭遇した現メンバーのマーク・キブルは、「なんだその辛気臭いハーモニーは」と思ったらしく、アドリブで5つ目のハーモニーを足し、そのまま当日の彼らの公演に5人目のメンバーとして出演したそうだ。なんとも運命的で、音楽的な出会いである。

 以前、彼らに「メンバーを選ぶときに一番大事にしていることは?」とインタビューをしたことがある。彼らは、歌唱力や各コーラス・パートの音域ではなく、「良い耳を持っていること」と話していた。トイレのようなよく響く場所で歌うと心地良く音が聞こえると思われがちだが、実は細かいミスが響きによって隠されることもある。響きが多い場所で真に心地良い音を奏でるには、お互いをよく聞きながら自分の音を発する必要がある。彼らは最初から、そして今でも、この感覚を非常に大事にしているからこそ、6パートの複雑なジャズ・ハーモニーでも、人々が聴きやすいように届けられているのかもしれない。


▲ Get Away Jordan Live (ca. 1989)


 その後、数回のメンバーチェンジを経て6人編成となった彼らは、ピアノでしか奏でられないような高度なジャズ・ハーモニーと、それを声で再現する歌唱技術の高さで、瞬く間に米国で話題となる。

 1988年、デビュー・アルバム『テイク・シックス』が早速2つのグラミー賞を受賞。心地良いゴスペルを軸にしたスウィングとリッチなハーモニーを奏でる彼らのサウンドは、エラ・フィッツジェラルドやスティーヴィー・ワンダー、クインシー・ジョーンズなど、数々の大物アーティストたちを魅了し、様々なコラボレーションを生み出した。さらに2枚目のアルバム『ソー・マッチ・トゥ・セイ』は、ビルボード・コンテンポラリー・ジャズ・チャートで2位まで上り詰める。

 2枚目のアルバムリリースのあと、ファースト・テナーのマーヴィン・ウォーレンがプロデュース業に専念するため脱退する。新しく入ったマーク・キブルの弟、ジョーイ・キブルは、それまでのテイク・シックスのレパートリーをマークから口伝えで教えてもらい、2週間でマスターしたという。メロディではなく、高度なジャズ・ハーモニーを十数曲分2週間でマスターするというのは、驚くべき歌唱技術が無いと不可能である。新メンバーの耳の良さというのは、非常に大事だったのだろう。

 3枚目からはアカペラだけに留まらず、『ヒー・イズ・クリスマス』、『ジョイン・ザ・バンド』、『ブラザーズ』など、楽器を加えたアルバムもリリースした。また、1998年からは彼らのルーツであるゴスペル・ジャズ・アカペラに立ち返り、2018年現在まで、合計18枚の素晴らしいアルバムをリリースしてきた。


▲ Tribute

▲ Come On (TBN Interview)


 余談だが、脱退したマーヴィン・ウォーレンは、その後『天使にラブソングを』などをプロデュースし、大成功を収めている。

リッチなハーモニーを深く楽しむ

 彼らは観客とたくさんコミュニケーションを取る。非常にエンターテイメント性に富んだステージだ。高度なコーラスを奏でていることをつい忘てしまうほど、楽しいステージを彼らは見せてくれる。ただせっかくなら、ハーモニーの世界に衝撃を与えた彼らのリッチなハーモニーを深い部分まで堪能してほしい。

 気軽に音楽を楽しんでいるときは、自然と一番上のライン、メロディを主に聞くようになり、人の耳は自動的に「メロディとそれ以外」といった具合に分けてしまう。その際に、メロディを少しだけ他のパートと混ぜるように聴き、それがどのように他のコーラスと重なり、動いていくのか、感じるようにしてみて欲しい。彼らのサウンドがメロディとそれ以外のパートに分離せず、1つの“面”、“動く音の壁”のように感じられるようになったら、あなたもハーモニー世界の住人の仲間入りだ。

 ジャズ・ピアニストのような高度な音楽技術を分析する耳を持つ必要はない。ただ、テイク・シックスのサウンドを深く楽しめるようになれば、さらに彼らのことが好きになること間違いなしだ。

進化し続けるテイク・シックス・サウンド

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 最初のアルバムがリリースされて30年、彼らのサウンドは進化し続けている。初期には非常に高度なハーモニーを用いて、音楽の知識を持った人たちこそが楽しめる編曲をしていたが、最近の10年間は、ポップ・ミュージックのような、非常にシンプルで聴きやすいサウンドもたくさん取り入れ始めている。この歳になっても自分たちのサウンドを変えられるのは、なかなかできることではない。そのまま高度なハーモニーを追求し続けることもできたはずだが、周りを聴く能力が高い彼らは、聴いている人が気持ちよくなれる音楽を作ろうと考えたのかもしれない。

 米ビルボードのコンテンポラリー・ジャズ・アルバム・チャート1位を獲得した出来立てほやほやの新アルバム『アイコニック』。カヴァー曲も多く、耳馴染みのある本作を引っ提げ、この8月、日本にやってくる。

 世界一のアカペラ・グループ、テイク・シックスのステージ、必見だ!


▲ Sailing (Tim Kelley Remix)

 

 

テイク6「ワン」

ワン

2012/04/18 RELEASE
VSCD-3913 ¥ 2,376(税込)

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