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博報堂、エヴィクサーによる<未来のエンタテインメント体験>とは? ビルボードジャパン×Cip協議会による【Live Hackasong】初参加に向けてインタビュー



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コンテンツを活用した広告コミュニケーションや新規ビジネスを支援する博報堂“コンテンツビジネスラボ”と、音と通信をテーマに研究開発を行うエヴィクサー。
両社がタッグを組んで、<未来のエンタテインメント体験>をテーマとしたハッカソン【Live Hackasong】に参加することが決定した。今回、提供されるのは博報堂の取り扱う様々なエンタメデータと、エヴィクサーによる音響通信Another Track。両社の組み合わせによって、どのような<未来のエンタテインメント体験>の可能性があるのか。両社にインタビューを行った。

瀧川(エヴィクサー)「Another Trackは、1つの空間に人を集めることができる」

--今回、博報堂、エヴィクサーの2社合同としてハッカソンに参加していただくことになりました。まず、エヴィクサーからご提供いただく「Another Track」とは、どのような技術ですか。

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▲瀧川 淳

瀧川 淳(エヴィクサー 代表取締役社長):音響通信を使って、デバイスを制御するという技術です。分かりやすく言うと、音の信号をスマートフォンが認識すれば、予期せぬことが起こるというものですね。スマートフォンの電源を入れて特定のアプリを立ち上げていただく必要があるのですが、アプリが立ち上がってさえいれば、ユーザーが何かボタンを押したりしなくても、ステージの進行にあわせて勝手に光ったり、字幕が出たりします。なので、一体感を生みやすいことが特徴です。

--インターネットやWi-Fiではなく、音を信号として使うという技術なのですね。

瀧川:ライブ会場は地下など通信環境が安定していない場所も少なくありませんし、また多くの観客が集まるとパケ詰まりや輻輳といった現象で思うように通信が出来ないケースも起きやすくなってしまいます。なので、一斉に光るなど大勢の人を巻き込んだ演出をする場合は、インターネットやサーバ通信に頼らず、その空間だけで共有できる通信を使う方が良いと思い、「Another Track」を開発しました。



▲音響通信「Another Track(R)」

--今まで、どのようなシーンで活用されているのでしょうか。

瀧川:例えば、5月19日に新宿駅前のユニカビジョンで行われた【ももいろクローバーZ スペシャル上映会】でも、当社の「Another Track」が採用されました。まず来場者の皆様に、「Another Track」をダウンロードしていただきます。そして、そのスマートフォンをユニカビジョンにかざすと、映像と同期した高音質サウンドを聴くことができるというものです。ワールドカップのパブリックビューイングもそうですが、後日自宅でも見れるコンテンツをわざわざ出かけていって多くの人と一緒に見るという体験は、昔、街頭テレビを皆で見た感覚に近いと思います。新宿のユニカビジョンは100平米くらいある大画面なので、とても迫力があり、定期的にこのようなイベントによって多くのファンで賑わっています。ただ、屋外なので音量に制限がありますし、JRの線路や靖国通りに面しているため、ライブ音源が鮮明に聞こえません。なので、スマートフォン側に高音質な音を格納し、ビジョンと同期させることで没入感のある体験を可能にしました。

--大画面で見るだけではなく、高音質で聞くことでより没入感を味わうことができるのですね。

瀧川:今、様々なARやVR体験を提供するサービスが生まれていますが、映像だけでなくリアルな音に関する研究も、より熱心になってきました。今、こうやってお話していますが、この会話だけではなく、後ろで降っている雨の音や、右側から聞こえる足音などを感じられると、一層リアリティを増すことができます。また、「Another Track」の他のメリットとしては、限定した範囲でしか信号を送ることができないので、1つの空間に人を集めることができることが可能となります。

--他には、どのようなシーンで活用されているのでしょうか。

瀧川:2018年2月から劇団四季で多言語に対応した字幕を出すサービスを始めました。これは、スマートフォンではなく、「字幕グラス」を使うのですが、メガネをかけてステージを見ると、メガネに字幕が表示されるというものです。劇団四季のミュージカルは、基本的には同じセリフ、同じ演出で上演されますが、いくらリハーサルやステージを重ねたとしても、セリフや動きのスピードには若干のズレが生まれます。1秒でも字幕が遅れると動きとズレてしまいますし、最終的に5秒ズレてしまうと、内容に大きな影響が出てしまいます。ですが、この「字幕グラス」であれば、BGMに組み込んだ信号を取得し、定期的に字幕のズレを修正してくれます。今、ダイバーシティやアクセシビリティの取り組みが推進されていますが、これを使うことで外国人の方や障がい者の方と一緒に座って同じコンテンツを楽しむことができます。

--この字幕は、英語、中国語、韓国語にも対応されていますが、スタッフが手動で字幕を操作するとなると、多くの人件費がかかります。そういった課題も解消されますね。

瀧川:そうですね。ただ、もともとこのサービスは訪日外国人向けをメインに企画されたのですが、実際スタートすると、障がい者の方の反響がとても多いことが分かりました。例えば、聴覚障害のあるお母さんと娘さんがいた場合、2人で食事に出かけることはあっても、2人でミュージカルを見るという体験は今までなかったのではと思います。ですが、この「字幕グラス」を使って一緒に見ることができれば、ミュージカルを見た感動をリアルタイムに共有することができますし、ミュージカルを見た翌日も、1か月後も「劇団四季のライオンキングの、あのシーンが良かったよね」と、思い出を共有することができます。一緒に楽しむことができるというのは、ミュージカルのみならず、映画でも音楽でもスポーツでも非常に重要なことです。当社の技術を使うことで、障害のあるご本人のみならず、その家族やお友達も含めてエンタテインメント体験をサポートすることが可能になりました。

--次に、博報堂としてご提供いただく「コンテンツファン消費行動調査」ですが、「コンテンツビジネスラボ」が毎年発表しているデータです。「コンテンツビジネスラボ」とは、どのような目的で立ち上がったプロジェクトなのですか。

木下 陽介(博報堂 研究開発局グループマネージャー):コンテンツビジネスラボは、博報堂と博報堂DYメディアパートナーズによって、2012年に発足しました。クライアントや、メディア、コンテンツホルダーのビジネス支援を目的としており、ドラマ、アニメ、ゲーム、スポーツ、美術展など様々なエンタテインメントの調査や応用研究をしています。「コンテンツファン消費行動調査」は、そんな活動のうちの1つですね。音楽やアニメなど、1つのジャンルに特化したユーザー調査は各社より発表されていますが、皆さん自分自身の1日を振り返ってみても、音楽を聴いたあとにスポーツ番組を見るなど、様々なジャンルを毎日体験していますよね。なので24時間×365日を、どんなエンタテインメントに時間やお金を消費しているのかということを年に1回発表しているのが「コンテンツファン消費行動調査」です。僕は音楽とスポーツ担当ですが、映画だったりドラマだったりと、それぞれのジャンルに特化したスタッフが集まっています。

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▲木下 陽介

--他に、ハッカソンにご提供いただけるデータはありますか。

木下 :ブログやTwitterなど、様々なSNS上の生活者の発言を収集し、発言件数や内容を高速に集計、分析する「Topic Finder」も提供します。日本最大規模のデータ量、収集範囲となるツールですね。

--それらのデータを使って、今 研究されているプロジェクトがあれば教えていただけますか。

木下 :Billboard JAPANのチャートを構成するデータ(CD売上、ダウンロード、ストリーミング、ラジオ、ルックアップ、ツイート、動画再生)と、あるアーティストがどれくらいSNSでバズっているのか、どれくらいメディアに取り上げられたのか、掲示板にどれくらい投稿されているのかというデータを掛け合わせて、トレンドを分析する研究を行っています。例えば、アーティストがYouTubeの動画を公開し、新曲をリリースする前に、ヒットの波形として現れるデータとして、Wikipediaの閲覧数も有効です。皆さん、知らないアーティスト名やワードを聞いた時、まず検索しますよね。その時に、Wikipediaのページがあれば見ると思います。なので、実際にお金を払うまでのヒットの予兆というか、先取りを表す1つの指標だと捉えています。

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木下(博報堂DY)「エンタメを、よりもっと楽しむためのスマホ情報体験が生まれたら」

−−今回、博報堂とエヴィクサーの2社合同でハッカソンに参加いただくことになりましたが、現在 2社で既に開発されているプロジェクトはありますか。

木下:これからですね。我々の研究テーマの1つに、「次世代顧客接点の開発」というものがあります。デジタル化が進み誰もがPCやスマホの中で過ごす時間が増えてきています。その中で取得したデータを使って我々はユーザーの解析を行うのですが、その施策がメールや広告だけではなくもっとデジタルテクノロジーを活用して何か新しい顧客体験につないでいけないだろうかということをずっと考えていました。特にリアルな体験の場をデジタル化し、適切な情報・体験を提供するということは広告会社である僕らのやるべきことだと思っており、新たな顧客接点のプロトタイプを作れる会社を探していました。そんな時にエヴィクサーさんとお会いし、「Another Track」の技術を知りました。先ほど瀧川さんの説明にあった通り、ライブ会場は通信環境が整っていないという1つの課題がありましたが、「Another Track」はそれらを解決して情報を出すことが可能です。なので、今回のハッカソンでは「Another Track」を使って未来のエンタテインメント体験とは、一体どのようなことが可能なのかを考えてみたいと思っています。

−−博報堂のデータと「Another Track」は、どんな組み合わせが考えられそうでしょうか。

瀧川:「Another Track」は、データとデバイスを繋ぐだけの役割です。ですが、音の信号をトリガーにして、セレンディピティを演出することも可能ではないでしょうか。例えば、ライブに来る前後の行動についてのデータも時間軸で見ることによって、博報堂さんのデータとAnother Trackは面白い組み合わせになるのではと思っています。

道堂本丸(博報堂 研究開発局):僕は実家がライブ演出のシステム開発をしているということもあって、学生の頃からライブはとても身近な存在でした。最近のライブ会場ではペンライトを同期させて一斉に光らせたり、スマートフォンを観客が光らせるなどの演出が行われていますが、スマートフォンは誰でも持っているという利便性以外にも可能性があると思っています。アーティストの演奏やパフォーマンスに対して歓声を上げたり、手拍子をするというリアクションだけではなく、例えばスマートフォン経由で観客のデータを取得し、そのデータをアーティストにフィードバックすることができれば、アーティストは新たなアクションを起こすことができるかもしれません。今、来場者の顧客データは、ライブ中にはなかなか活用されていません。ですが年齢や性別、リピーターかどうかなどの属性によって、アーティストから返すフィードバックを変えることができれば、面白いインタラクションができるのではと思っています。なので、広告会社が今、広告を配信するときに行っているようなデータのやりとりを、「Another Track」を使ってライブ演出側で使えたら面白そうだなと思っています。

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▲道堂 本丸

−−性別、年齢などのフィードバックは可能だと思いますが、観客とステージとのインタラクションをするのであれば、来場者それぞれの熱量は重要な情報になると思います。ただ、熱量を計測するというのはハードルが高そうですね。

道堂:過去に、脈拍や脳波を計測して使えないかを考えたことがあるのですが、それらのデータと熱狂の相関性を見つけたり、判定するには高いハードルがありました。ですが、現在取得できているデータのうち、リピーターかどうかや、購入している席種の推移、グッズの購入履歴などからも、ある程度熱量は取れるのではと思います。

木下:今、サッカーのワールドカップが開催されていますが、僕も、目黒もコアなサッカーファンで、サッカーのテレビ解説は、多くの人が理解しやすいような内容になっているので物足りなく感じることがあります。データの活用という意味では、ユーザーが副音声を選択するのではなく、視聴者のサッカーの嗜好性やファンの深度などをデータから判別して適切な情報を出し分けることができれば、面白そうですね。

目黒慎吾(博報堂 研究開発局):僕は、イギリスで映画の勉強をしていたことがあるのですが、アメリカでは劇場で仮装して手を叩きながら見たり、セリフに合わせてアクションを起こしたり、インドでは踊りのシーンで観客も踊るなど、映画には様々な楽しみ方がすでに行われていました。日本でも、最近「応援上映」や、「絶叫上映」など様々なスタイルが出始めていますが、これもデータを使って体験を出し分けることができれば面白いなと思っています。例えば、スマートフォンをかざすと、バーチャル上では仮装した姿を見ることができるとか。個人に応じた遊び方というのは、映画館においても、もっと広げられるのではないかと思っています。

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▲目黒 慎吾

木下:今のスマートフォンは、webブラウザや、アプリにかなり依存した形で、情報設計が制限されています。手軽に検索したり、情報を収集するという点では、とても長けているデバイスですが、外側で起こっているオフラインの状況と組み合わせるという意味では、まだまだ可能性があると思っています。なので、今回のハッカソンのテーマは「未来のエンタテインメント体験」ですが、当社のデータとエヴィクサーのAnother Trackを組み合わせて、「エンタメを、よりもっと楽しむためのスマホ情報体験」が生まれたら面白そうですね。

−−たしかに、これだけスマートフォンが普及していれば、視覚、嗅覚、聴覚などと同じように、自分自身の1つの感覚や表現になり得ますもんね。

目黒:バーチャルアシスタントの市場も急速に拡大していますし、今後それがスマートフォンなのかどうかは分かりませんが、常に身に着けていて、自分のことを理解してくれるAIかデバイスが、例えば「3年前は、こんなことをしていたよね」って思い出させてくれるなど、何かしら最適な体験をアシストしてくれる時代がすぐ来ると思っています。

瀧川:私たちは、デバイスの制作にもチャレンジしているのですが、スマートフォンって、落として割れた時に嫌な気持ちになりますよね。この気持ちって、すごく重要だと思っています。壊したり、落としたりして悲しいという気持ちは、物に対するロイヤリティがそれほどに高いということですから。常に身に着けるからこそ、データを収集することができるので、デザインも含めて、常に身に着けたいと思うかどうかというのは、とても重要だなと思っています。

−−今後、注目されているデータというのはありますか。

木下:今回お話したような活用の仕方で言うと、位置情報ですね。今、位置情報というのは「この場所に来た」人に対して広告を出すというようなケースが通常です。でも、それだけではなく、その人の行動のログをきちんと分析すると、その人が持つ嗜好性や、行動パターンから見えるインサイトがあるのではと思っています。「この人は、今ショッピングモードだな」とか、「新しい情報を探索しているモードだな」など、その人のモードを分析して広告を出すという研究をしているチームがいます。なので、エンタテインメント体験で言うならば、ライブ会場の帰り道、楽しい気分になっているのか、泣きながら帰っているのかを分析し、適切な情報を出し分けることもできると広告のあり方も変わってくるのではないかと思ってます。2020年に向けて5Gが登場してくると、そういったデータもより仔細に取得したり、3Dコンテンツを発信できるようになるかもしれません。

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−−今回のハッカソンに期待することは、なんでしょうか。

木下:社内だけで開発していると、アイディアの幅が限定的になることがあります。ハッカソンのようなオープンイノベーションを活用することというのは、今 研究開発局でも推奨されています。それらを活用することでリードタイムを短縮し、世の中に対してスピード感を持って新しい動きをつくっていきたいと思っています。今回、提供するデータ以外にも興味のあるデータがあれば、参加者の皆さんからのリクエストには、できる限り対応していきたいと思っています。

瀧川:「字幕グラス」もそうですが、私たちのような技術いわゆるセンシングというのは目に見えないものを見せるとか、聞こえないものを表現するなど、人間の感覚とは逆向きのことに使われることが多くあります。あるシンポジウムでお聞きした話ですが、スマートフォンのおかげで、障がい者の方が前もって行き先や目的地を決めずに出かけられる、大げさに言うと迷子になれるようになったと聞きました。これこそが技術が起こしうるイノベーションのきっかけだなと思っていて。ボイスオーバーやGPSのおかげで、障がい者の方が目的なく出かけるという体験を引き出すことができるようになったんだなと。今まで、何度かハッカソンに参加したことがありますが、ハッカソンというのは独特のライブ感や、エンジニア同士のシンパシーが生まれる場で、我々にとっては新たな発見を教えてもらう場でもあります。我々のシーズ(技術の種)を使って、目の付け所を変えてくれるような体験が生まれることを期待しています。

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