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ビルボードジャパンとCip協議会による【Live Hackasong】に向けて、提供技術やNTTドコモの考える新たなエンタテインメント体験についてインタビュー



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2020年に向けて、中期戦略として、5Gでより豊かな未来を作っていく「beyond宣言」を掲げているNTTドコモ。様々な分野に挑戦していく中で、一つの柱になっているのが「新体感のエンタテインメント」だ。
VRやARを通じて新たな体験を発信していくことを目指すNTTドコモが、この度開催されるハッカソンの参加者に提供するのは「VRアバターコミュニケーション」。一体どのような技術なのか、そしてドコモが描く未来のエンタテインメント体験とは。本技術開発を担当するNTTドコモ移動機開発部 的場直人氏と、板橋清周氏に話を聞いた。

様々な違いを乗り越えてコミュケーションすることができるのでは

--今回、ご提供いただくVRアバターコミュニケーションとは、一体どのようなものなのでしょうか。

板橋清周(移動機開発部 第二イノベーション推進担当):VRの世界の中で、自分のアバターをできる限り自分自身と同じように制御できるという技術です。今回、ご提供させていただくライブラリーには、「アバター制御」、「モーションキャプチャ」、「表情制御」、「アバターキャリブレーション」の4つがあります。まず「アバター制御」はその名の通り、アバターを制御する技術。「モーションキャプチャ」は、手や指の動きをキャプチャーしてアバターに反映させる技術、そして表情制御は、人間の目の動きや、それぞれの母音に合わせた口の動きです。最後の「アバターキャリブレーション」は、アバターと、実際の人の身長や手足の長さとを合わせる技術です。

--NTTドコモがVRアバターコミュニケーションを開発することになったきっかけは、なんでしょうか。

的場直人(移動機開発部 第二イノベーション推進担当 担当課長):ドコモとして、新たにVRの分野に取り組むことになったときに、VRと一言で言っても様々な分野があるので、何が良いかを考えました。その結果、我々ドコモは通信の会社なので、やはりコミュニケーションを軸に据えるべきだという考えに至りました。そして2017年初めごろから構想を練り始め、2017年末に被験者の方に体験していただき、現在は実用化を目指して開発を継続しているという段階です。

--開発にあたり、苦労された点は何でしょうか。

的場:映画に採用されているCGというのは、人体の関節や指の動きなど、多大な労力をかけてトラッキングし、さらに大勢のスタッフの人海戦術によってきめ細かく編集されています。ですが、我々のVRアバターコミュニケーションでは、簡易な方法、かつリアルタイムで処理を行う必要があります。そこで人体の6か所のみにトラッキング用のデバイスを装着する方法を採用しました。そのため、どうしても精度が劣るため、滑らかな動きを表現するという点に苦労しましたね。
もう1つは表情です。表情に関しては、口の動きや目線など文献調査をしたり、様々な有識者にヒアリングしたりするなど、どうあるべきかを長い時間かけて検討しました。ロボットやヒューマノイドでリアルさを追求していくと、あるラインからは不気味に見えてしまうという「不気味の壁」というものがあります。VRアバターにも同じ課題があって、クリアな静止画の顔を動かすだけでは不気味に見えてしまう。なので、人が話しているときの目線や、興味のない時の目線など、自然な動きが現れるように追求しています。

--たしかに、話している時でも口だけが動いているのではなく、目線や顔の筋肉など、様々なところが動いています。

的場:ですので、自然なコミュニケーションに見えるために、必要な動きは何かということを学術的に分析し、アバターに反映させました。ですが、近づけすぎると一方で不気味になるので、まだまだ課題もありますね。また、どこまでリアルに見せるべきかは、利用用途によっても変わってくると思っています。初対面の人と話をすると、少なからず緊張したり、言いたいことが言えなかったりしますよね?ですが様々な実験から、アバター同士の方がスムーズにコミュニケーションができるという結果もでています。年齢差や、性別、キャリアなど様々な違いを乗り越えてコミュケーションすることができるのではと思っています。

--面と向かって言えなかったことも、メールや手紙だと伝えられる場合もありますね。

的場:例えば、会議中に上司から「今日は、無礼講でいこう」と言われたとします。でも、いくらそう言われても、なかなか思ったことを口には出しづらいものですよね。ですがアバターを介せば、遠慮なく意見を言えたり、クリエイティブな議論ができたりするかもしれないなと。なので、まずはどういった用途で使うかを決めてから、必要な要件を整理していく必要があると思っています。

--現時点で、実用化できそうなシーンはありますか。

板橋:様々なアイディアがありますが、VR空間で一緒にスポーツや音楽ライブを見る仮想家族団らんは作ってみたいですね。一人暮らしの方でも、自宅で友人や家族と一緒に同じコンテンツを見ながら、コミュニケーションを取ることができるというような。他には、ショッピングをVR空間に作ることもできるのではと思っています。例えば、車の販売店まで行かなくても、VR空間上で車を見ながら、ディーラーの方の説明を聞くという空間も実現できるのではと思っています。

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5Gという回線を最も活かせるコンテンツは何か

−−今年は、4月に東京ソラマチに【PLAY 5G 明日をあそべ】を開発されたり、【namie amuro×docomo VR stage】という安室奈美恵のライブのVR体験アプリを発表されたりするなど、様々なVRコンテンツを発表されています。VRの開発に力を入れておられる理由は何ですか。

板橋: 今、主流の4G回線より、大幅に通信速度が向上する5Gが2020年から実用化されるためですね。5Gという回線を最も活かせるコンテンツは何かと考えたときに、やはりVRコンテンツだと思いました。ですので、VRコンテンツの開発については、新体感エンターテイメントの創出の一環として、ドコモで最も力を入れている取り組みの一つです。

−−VRやARを体験できる場所が増え、テレビでも取り上げられる機会が増えた結果、昨年以降、VRが私たちにとって身近な存在になりました。今後VRを、より浸透させるために必要なことはなんでしょうか。

板橋: まずは、体験品質の向上です。人間が普段見ている視野角の範囲は、360度の空間のうちの4~6分の1程度です。なので、4Kや8Kで収録しても、VR空間の中で見ると、パソコンにものすごく近づいて見ているのと同じ状態になり、解像感が落ちてしまいます。その結果、テレビなどで見ている4Kや8Kの映像とは、格段にクオリティが下がってしまいます。この点は今 我々が最も力を入れて取り組んでいる課題で、ディスプレイの解像度の向上に加えて、解像度の高い映像を分割し、配信先で見ている方向のみ高解像度で送信する、パノラマ超エンジンという技術を使った配信の開発を進めています。

的場: 現在、ソラマチで行っている【PAY 5G 明日をあそべ】では、このパノラマ超エンジンを使った8KのVRを体験できるコーナーも展示していますので、ぜひ試してみてください。

板橋: そして、もう1つの課題はデバイスですね。VRゴーグル自体が大きくて重いこともありますし、ハイエンドなパソコンとゴーグルを接続する必要がありました。ですが、今はOculus Goなどスタンドアローンで動作するデバイスが出始めています。価格も3万円以下と、手ごろな金額で出始めているので、高品質で低価格なデバイスによって、もっとVRが普及していくのではと思っています。

−−楽しみですね。今回のハッカソンでは、どんなことに期待されていますか。

板橋: 我々が全く想像していないものが生まれれば良いですね。あとは、dアカウントなど当社の既存のアセットと組み合わせることで価値が最大化できるような、そんな新たなサービスの原案が生まれることに期待しています。

−−今回、御社の技術を使いたいと希望するチームへのメッセージはありますか。

板橋: アバターの作成については、サンプルもお渡ししますが、アバター自体がハッカソンと相性が良く、CGを作ることができるフリーソフトもたくさんリリースされています。それらを使って、当社の制御技術を活用してもらえればと思います

的場: Unityをフルに活用していただくので、ある程度 事前にUnityについて勉強しておいていただくとスムーズだと思います。アバターの作成については、Vtuberの市場が伸びてきた結果、様々なツールやサードパーティーが日々、アップデートされています。今、まさに成長している分野で、様々な企業が一気に取り組んでいますので、昨日まで全くなかったものが、今日急に出てくることもあります。Vtuberという言葉自体、1年前まで皆さん聞いたことがなかったと思いますが、ここ最近の急成長ぶりはすごいですもんね。なので、日々アップデートされる情報に敏感になっていただくことが重要だと思います。

−−Vtuberについては、グリーがVtuberに特化したライブエンタテインメント事業を行う新会社を設立したことでも、大きな話題になりました。

的場: Vtuberは、VRの1つの分野になりましたからね。他にも、VRChatなどVRを一方的に体験するだけでなく、相互でコミュニケーションできるという新たな体験が、どんどん生まれてきています。

−−今回のテーマは「未来のエンタテインメント体験」です。皆さんにとって、未来のエンタテインメントとはどのような世界でしょうか。

板橋: まず、チケットが取れないという問題が解消されると思っています。 今だと、チケットが取れなかったら見られないという選択肢しかありませんが、今後はチケットが取れないならVRで見るという選択肢が増えるでしょう。これは、観客にとってもメリットがありますし、興行主にとってもキャパシティという考え方がなくなるので大きなメリットがあります。あとは、今 映画館で体験できるライブビューイングは全て自宅で体験することが可能になります。それも一人で見るのではなく、家族や友達と一緒に体験することができる。そういう、エンタテインメントを体験する新たな形が、近い将来にやってくるのではと思っています。

−−いくら映像が鮮明になったとしても、その場でしか感じることのない熱狂が、ライブにはあると思っています。そのあたりは、どうクリアされていくのでしょうか。

板橋: 今まさに、その研究をしているところですね。ライブ会場で感じられる臨場感とVR体験の境界線が、どこにあるのかを1つずつ見つけ、潰していくのが、当面の課題です。

的場: ただ、未来のエンタテインメント体験にも2つの方向があると思っています。1つは、先ほど板橋が申しあげたような、まるでその場にいるかのようなリアルを追求していくこと。もう一方では、先ほどアバターを少しデフォルメした方がスムーズなコミュニケーションが可能になるとお話ししたように、バーチャルでしか体験できない新たなジャンルのエンタテインメントも作っていくべきだと考えています。

板橋: Vtuberは後者に近いですよね。

的場: Vtuberであれば、僕のようなおじさんが、可愛い女の子になることも可能になりますから(笑)。

板橋: なので、今後VRでのコミュニケーションがより浸透すれば、アバターがファッションの一部になるのではと考えています。服を着替えたり、お化粧を変えたりするような感覚でアバターを使い分けるというか。そうなると、今後 ファッションショーの1つのカテゴリーにアバターのデザイナーが現れるかもしれませんし、自分のアバターを選んだり、持ったりすること自体が一つのエンタテインメントになるかもしれませんね。

−−そこまで、VRが浸透するのは少し怖い気もします。

板橋: そうおっしゃる人も多いんですが、リアルな体験がなくなることは絶対にないと思っています。なのでリアルもあるしVRもある。より、楽しめる選択肢が増える世の中になると思っています。

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