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コリーヌ・ベイリー・レイ 来日直前インタビュー 「私にとっては、誰かと繋がれているということが重要なポイント」



 6年ぶりとなった昨年4月の日本公演から約1年。コリーヌ・ベイリー・レイが初めてビルボードライブで公演をする。しかもこれは、ピアニストとギタリストと彼女の3人だけによるキャリア初のアコースティック・ライブになるとのこと。ニュアンスに富んだ柔らかな歌声の魅力を間近で生々しく味わうことのできる、とても貴重な公演になるだろう。

 このメール・インタビューでは、6月のその日本公演に対する抱負だけでなく、2016年発表作『ザ・ハート・スピークス・イン・ウィスパーズ』の制作によって何を得たかや、最近のコラボレーション・ワークについて、さらには新作についてのプランなども質問してみた。音楽に対するコリーヌの真摯な向き合い方とその拘りがここから見えてくるはずだ。(質問作成/構成:内本順一)

「私の好きな曲は、どんな環境でも馴染むの」

――今回がビルボードライブ初登場ですね。どういった編成での公演になるのでしょうか?

コリーヌ・ベイリー・レイ(以下コリーヌ):今回のライブは、ピアニストとギタリストと私だけ。たった3人のアコースティック・ライブになるわ。とても心地いい雰囲気のライブになるはず。今回のようなライブは過去にしたことがなくて、これが初めてよ。文字通り“音楽を聴く”オーディエンスに向けた演奏になるから、必要最小限のものだけで曲を披露することと即興アレンジが可能だということに、すごくワクワクしてる。

――バンドセットでの公演とは異なるアコースティックセットならではのよさは、どんなところにあると考えていますか?

コリーヌ:いい点はハーモニーに意識を集中させることができることと、自由にテンポを決められることね。ドラムがないことでテンポをスローダウンしたり、逆に早めることも簡単にできる。それは、とても穏やかに歌えるということでもあるの。そのおかげで親密感が増すはずよ。

CD
▲『ザ・ハート・スピークス
・イン・ウィスパーズ』

――『ザ・ハート・スピークス・イン・ウィスパーズ』はシンセを用いたエレクトロなアレンジの曲が大半でしたが、それらの曲を今回の公演ではアコースティックにアレンジし直して演奏するのでしょうか? だとしたら、そのようにアレンジするのは難しいことですか?

コリーヌ:私の好きな曲は、どんな環境でも馴染むの。シンセやドラムでやっても合うし、壮大なアレンジでも合うし、キャンプファイヤを囲みながらアコースティック・ギターで静かに楽しむことだってできる。今回もシンプルなアコースティックのアレンジにぴったり合うことを期待しているわ。そもそも曲作りの段階からこの方法だったわけだから、絶対にうまくいくと思うの。『ザ・ハート・スピークス・イン・ウィスパーズ』に収録されている曲のいくつかは、ギターだけでスタートしたんだもの。

――『ザ・ハート・スピークス・イン・ウィスパーズ』はその前の2作からサウンド的にかなり大きく変わった印象がありました。いま振り返って、あのアルバムをどのように捉えていますか?

コリーヌ:まず、あのアルバムの発売からもう2年も経つなんて信じられない。リリースからノンストップで世界中をツアーしていたから、特にそう感じるのかもしれないわね。リスナーが私の音楽から何を感じるのか、その反応を見るのがとても好きで、それに接する心構えが自分にできているかどうかは大事なことなの。前作のツアーはこれまでのなかで、最もやりがいのあるツアーだったと感じている。『ザ・ハート・スピークス・イン・ウィスパーズ』からの曲も、過去2作品からの曲も披露した。あのアルバムは前作とは全く異なるサウンドの作品を作ることに挑戦したものだったの。そして次回作はまた、『ザ・ハート・スピークス・イン・ウィスパーズ』と全然違う作風になるはず。あらゆる選択肢のなかからああいう音をチョイスすることができたことをとても嬉しく思っているし、これからも常に曲を作り続けて新たなサウンドを見つけたいと思っているわ。

――『ザ・ハート・スピークス・イン・ウィスパーズ』はイギリスだけじゃなく、ロサンゼルスでもレコーディングし、しかも様々なミュージシャンとコラボレーションして作り上げた作品でした。そのように「いつもと違う場所で」「いろんな人と一緒に」作ったことは、あなたにどんな影響を与えましたか? それによって考え方が変わったというようなところもありましたか?

コリーヌ:「いつもと違う場所」からは、物事を違う角度から見るためのレンズと、物事を見通す力を手に入れたわ。ロサンゼルスはすごく楽しくて、KINGやモーゼス・サムニー、サンダーキャットやカマシ・ワシントンと会う時間も楽しかった。その場所の全てに取り憑かれた感じだったの。キャピタル・スタジオでの経験は音楽の可能性を大きく膨らませてくれた。また、(英ヨークシャー州)リーズでのレコーディングも楽しくて、世界的に知られているわけではない街から生まれたものが世界中に配信されるんだって想像すると、すごく気分がよかった。それはうずうずするような出来事だったわ。

――『ザ・ハート・スピークス・イン・ウィスパーズ』をいろんな人と一緒に作ったことで、あなた自身がよりオープンになれたところもあったんじゃないかと想像するのですが、どうですか?

コリーヌ:そうね。ミュージシャンとのコラボレーションは、いつもスリル満点。彼らの制作過程を間近に見ることができるし、違った見方を持つ者同士が集まった時に素敵なアイデアがパッと思い浮かんだりもする。私自身、もともとバンド活動をしていたし、誰かと一緒に曲作りするのが好きなの。KINGのパリスとの曲作りは最高に楽しかった。彼女が作り出すものは全て夢の国のような素敵なものばかりだから。ジェームス・ギャドソンと一緒に彼のスタジオでセッションしたのもすごくいい思い出。彼のリズム感はかなり先を行っていて、でもそれが不自然な感じもしなくて、刺激を受けたわ。

Me and James Gadson. He is making my songs come alive. What a genius. #dreamlife

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「次のアルバムに取り組んでいるところ」

――最近はアトランタのラッパー、Rauryのアルバムに参加したり、トレイシー・ソーンのアルバムに参加したりもしてましたね。それぞれ、一緒にやってみてどうでしたか?

コリーヌ:Rauryはとても美しいハートの持ち主でクールな友達もいっぱいいるの。彼の友達から農業や完全菜食主義について教えてもらえた。その友達の1人から『The Sovereignty of Quiet』という本を勧められて、ハマってしまったわ。トレイシーとは、別々の離れたところで仕事をした。共作曲にはたくさんの女性ミュージシャンが参加していて嬉かったし、女性がこの曲を聴いてすぐに歌の本質を察知することや、トレイシーが“fight like a girl (少女のように闘う)”という言い回しをとてもリアルに使っている様も、実に素晴らしいと思う。コラボレーションのいい点は、自分だけでは思いつかなかったことを実現できること。誰かとの共作にはかなりの利益があって、そのメインとなる部分はどれも予測不可能なんだけど、それがすごく面白いのよね。


▲Tracey Thorn - Sister (Official Video) ft. Corinne Bailey Rae

――ほかにも未発表のコラボレーションなどがあるのでしょうか?

コリーヌ:そりゃもう、たくさんあるわ。お蔵入りになった楽曲も何曲かある。実験的にいろいろ試してみるけど、その出来がうまくいかなかったりとかして…。でもその挑戦が、結果的に自分の今後の考え方、新たな物事の見方、そしてライティングやレコーディング、パフォーマンスといったことに繋がっていく。無駄なことなんてひとつもないの。

――ところで『ザ・ハート・スピークス・イン・ウィスパーズ』でコラボレーションしたKINGとの交流は、あのアルバム以降も続いてますか? 彼女たちと一緒にやったことの最大の収穫は?

コリーヌ:KINGとは今でも連絡を取っているわ。彼女たちから得た一番の教訓は、他人から指図は受けないという自立の精神についてね。KINGは自分たちの作品とそのサウンドスタイルに確固たる信念と自信をもっている。すごくハッキリとしたヴィジョンがあって、それは私が一番憧れる部分なの。ユニークで、美しくて、夢心地になるKINGの音楽も、彼女たちと同じくらい尊敬している。一番大事なのは、自分の直感を信じてそれに従うということなのよね。


――あなたはアルバムごとに音楽性を変えたい、そうやって成長していきたいと、以前のインタビューで言っていましたが、次のアルバムもまたガラっとサウンドが変わるものになりそうですか?

コリーヌ:ええ、これからも作品ごとに違うサウンドを目指すわ。意図的にそうしているんじゃなくて、それが私がやってきたことに対するリアクションっていうだけ。ずっと曲作りをして、スタジオにこもりっきりってことが多いから、新しいプロジェクトの度に前作とは違った取り組み方にこだわりたいの。

――サウンドが多少変わったとしても、絶対に「変わらない」部分、「残しておきたい」部分もありますか? あるとするなら、それはどういうところでしょうか。

コリーヌ:ソングライティングが私にとっては何より重要なの。だから曲の本質がナチュラルでオープンであるってところは、いつだって変わらないわね。

――新作のプランについて、いま話せることがあれば教えてください。

コリーヌ:次のアルバムに取り組んでいるところよ。まだ詳しいことは言えないんだけど、アート・プロジェクトであるということだけ特別に教えるわ。私にとっても新鮮な作品だってこともね。

――本格的なジャズのプロダクションに、あなたの歌声が向いているようにも思うのですが、そういうアルバムを作ることに興味はありませんか?

コリーヌ:私もジャズが大好きで、楽曲もジャズから多大な影響を受けている。スタンダード・ナンバーのハーモニーが大好きで、センチメンタルなストーリーを物語るのにも適していると思うの。ここ数年、何度かハービー・ハンコックやウェイン・ショーターと共演する機会に恵まれたし、エスペランサ(・スポルディング)とも仲良くさせてもらってるいる。彼女の音楽は大好きよ。最近だと、今年開催されたグラミー賞で「最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞」を獲得したセシル・マクロリン・サルヴァントを見つけたばかり。彼女は素晴らしいわね。そう、だから私もいつかジャズ・アルバムを作りたいって思ってるわ。


▲Corinne Bailey Rae and Herbie Hancock Perform "Blackbird"

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「私にとっては、誰かと繋がれているということが重要なポイント」

――デビュー当時と現在では、音楽観、人生観は変わりましたか?

コリーヌ:2006年以降、私の人生は180度変わったと思う。音楽が私にとって、世界を知ることと、何十万人もの人々と触れ合う素晴らしいツールになった。私の作った曲が世界中に広まっていくのを感じたり、様々なステージで演奏したりするのは、とても感動的だわ。それは私という人間性をも変えていった。私が思うのは、常に自分の音楽は成長し続けているということ。声質も成長して、「できるかも」と思ったことを実現させる範囲をどんどん拡大していけていると思う。

――歌声のよさ、歌詞のよさ、メロディのよさ、サウンドのよさ、ライブパフォーマンスのよさ、女性としての魅力などいろいろあるなかで、あなたが褒められて一番嬉しいのはどれですか?

コリーヌ:音楽に関することだったら、どんな褒め言葉も嬉しいわよ。最近は多くの人から私の曲が人生にどうリンクしているかを教えてもらうことが多くて。例えばそれは、恋に落ちた瞬間だったり、辛い時期を乗り越えようとしているときだったり……。私の音楽がその人たちのなかで特別な意味を持つことがあるようなの。だから、みんなから自分の人生と私の音楽がどうクロスオーバーしてきたかっていう話を聞きたいわ。それが私にとっての最高の褒め言葉かもしれない。

――最近、気に入ってよく聴いているアーティスト、または作品を、思い浮かぶままにいくつか挙げてください。

コリーヌ:映画『ドラゴン怒りの鉄拳』のテーマ曲をカバーしたカマシ・ワシントンの新曲「Fists Of Fury」は最高にカッコいいわね。政治的な意味合いも込められていて面白いと思う。あと、さっきも言ったセシル・マクロリン・サルヴァント。【Jazz FM Awards】での「ザ・ピーコックス」のパフォーマンスを見て、度肝を抜かれたわ。彼女の卓越したテクニカル・ヴォイスにはハートが宿っていて、簡単に見つからない存在だと思うの。彼女の歌声はずっと聴いていたいくらい好き。


▲Cécile McLorin Salvant - You're My Thrill (Official Video)

――あなたにとって、ライブとは? また、いまでもライブ前は緊張されることはありますか?

コリーヌ:生で演奏するのは私にとってすごく重要なことなの。全てがリアルになるから。ステージに立ってオーディエンスの目をしっかり見ると、彼らの動きや、どう聞こえているか、そしてどんな反応を見せるのかが把握できる。演奏している曲がちゃんと心に響いているかがわかるのよ。一番大事なのはコミュニケーションね。私のツアー制作会社はAll Connectedっていう名前なんだけど、大切にしているのはライブでオーディエンスを始め関係する人たち全員と繋がり合うということ。ライブ演奏は私にとって「全て」を意味するわ。アルバムのなかだけで上手く音を鳴らすのではなく、ライブでそれをリアルに響かせることができなければ、ミュージシャンとして成功しているとは言えないと私は思う。私にとっては、誰かと繋がれているということが重要なポイントなの。それからライブ前に緊張するかどうかだけど……緊張というよりも、意識を集中させて気持ちを奮い立たせている感じかしら。緊張感と高揚感が奇妙に入り混じった感じ。でも、ライブへの集中力を高めるのに、このミックスした感情はとても役立っているの。

――最後に、6月の公演を楽しみにしている日本のファンたちに一言お願いします。

コリーヌ:私の音楽をサポートしてくれている日本のファンに、私は特別大きな愛情を持っている。東京と大阪でライブをしたときは、どれもすごく楽しくて、いつかほかの都市でもライブをしたいって思ったの。日本のオーディエンスはみんなクールで、音楽を聴く耳が肥えていて、しかも親切でリスペクトの精神がすごい。それに日本は最高に美しい国で、ライブだけじゃなく、一人の観光客として新しい料理を食べることに挑戦したり、アートや文化に触れたりして滞在を楽しみたいと思ってるわ!


▲Corinne Bailey Rae: NPR Music Tiny Desk Concert


Corinne Bailey Rae video message for Billboard Live Tour 2018

コリーヌ・ベイリー・レイ「ザ・ハート・スピークス・イン・ウィスパーズ」

ザ・ハート・スピークス・イン・ウィスパーズ

2016/05/13 RELEASE
UICW-10005 ¥ 2,700(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.ザ・スカイズ・ウィル・ブレイク
  2. 02.ヘイ、アイ・ウォント・ブレイク・ユア・ハート
  3. 03.ビーン・トゥ・ザ・ムーン
  4. 04.テル・ミー
  5. 05.ストップ・ホエア・ユー・アー
  6. 06.グリーン・アフロディジアック
  7. 07.ホース・プリント・ドレス
  8. 08.ドゥ・ユー・エヴァー・シンク・オブ・ミー?
  9. 09.キャラメル
  10. 10.テイクン・バイ・ドリームズ
  11. 11.ウォーク・オン
  12. 12.ナイト
  13. 13.イン・ザ・ダーク (日本盤&海外デラックス・エディション収録ボーナス・トラック)
  14. 14.アイスクリーム・カラーズ (日本盤&海外デラックス・エディション収録ボーナス・トラック)
  15. 15.ハイ (日本盤&海外デラックス・エディション収録ボーナス・トラック)
  16. 16.プッシュ・オン・フォー・ザ・ドーン (日本盤&海外デラックス・エディション収録ボーナス・トラック)
  17. 17.ヘイ、アイ・ウォント・ブレイク・ユア・ハート (ライヴ・アット・キャピトル・スタジオ) (日本盤&一部海外流通盤収録ボーナス・トラック)

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