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フリート・フォクシーズ 来日インタビュー



FF インタビュー

 2012年1月の日本公演を最後に活動休止し、昨年約6年ぶりのアルバム 『クラック-アップ』 を <ノンサッチ>からリリースしてカムバックを果たしたフリート・フォクシーズ(Fleet Foxes)。バンド史上最高に壮大で奥ゆかしい力作となった同作を引っさげて2018年1月に行った来日公演では、緻密なサウンドスケープと珠玉のハーモニーが織りなす唯一無二の音世界に加え、メンバーのスカイラーがメイン・ヴォーカルをとり、 YMOをカヴァーするという貴重なパフォーマンスを披露し、日本のファンを喜ばせた。ここでは、ライブ直前にフロントマンのロビンと行ったインタビューをお届けする。

Live Photo: Kazumichi Kokei

だんだんプログレっぽいクレイジーなバンドになるつもりはないよ(笑)

――最新作『クラック-アップ』で波のサンプルを取り入れたり、アートワークも、これまでの山や牧歌的なイメージとは対照的な海を選んだ理由は?

ロビン・ペックノルド:ちょうどサーフィンを初めて、よく海に行っていたのと、2014年だったかな…ジョン・ルーサー・アダムスが『ビカム・オーシャン』という、いくつか名誉ある賞を獲った作品をリリースした。オーケストラが3つのグループに分かれて演奏していて、1つのグループがまるで波がうねるように演奏したかと思ったら、もう1つのグループは波の高なりを表現してて、それがぶつかり合ったり、穏やかな海を彷彿させるようなアレンジが施されていたのが、すごく気に入った。それでアルバムに収録されている曲の構造を考えている時にインスピレーション源となったんだ。主にこの2つがメインの理由かな。

――楽曲の構成に関しても、まるで波のように予想のつかない展開や分裂したイメージを受けました。

ロビン:単純に面白いことがやりたかったんだ。3rdアルバムということもあるから、どうやったらこれまでやってきたことの延長線でありつつも、新鮮味を保つことができるか、ということを考えた。過去の曲でも多少変化をつけてる曲はある―たとえば「Mykonos」も3つのパートによって構成されているけど、よりコンパクトにまとめてある。今回はそれをもっと色々な方法で提示することができたのがすごく面白かったね。



▲ 「Mykonos」MV


――ロビンのヴォーカルも円熟味が増し、表現力が豊かになっていますが、意識したことはありますか?

ロビン:『クラック-アップ』 は、これまでで一番キーが高い曲と低い曲が入り混じっている。最初の2枚では、可能な限り高いキー…デリケートなファルセットで歌っていたけど、今作では様々なキャラクターを演じている、または心理状態を表現しているという体で、多種多様な声で歌ってみたいなと思った。何もかも声を張り上げて歌い上げるのではなく、表現豊かに歌えたらって。

――中でもロビンの声が際立っている「I Should See Memphis」はどんなキャラクターを意識していたのですか?

ロビン:あれは自分の頭の中の声っていう感じかな。ヘッドフォンで聴くと、とても親密で近いから。内的独白のよう…思考を繋ぎ合わせているというか。

――なんとなくザ・ナショナルのマットの歌い方が頭に浮かびました。やや閉所恐怖っぽい感じが。

ロビン:ハハ、確かに(笑)。ヴォーカル一つですら色々な可能性があって、表現力が試されるのはクールだよね。

――もう一つの興味深いのが、 「~Memphis」は 最後の1分ぐらいに予想外の展開を迎えますよね。

ロビン:スタジオで実験してる時、僕がインプロヴィゼーションしてたら、それをスカイが内緒でレコーディングしてて…まぁ、いろいろ書いてみてどれが使えるかを見てたんだけど…ちょっと退屈な説明になっちゃうけど、あの部分がないと次の曲「Crack-Up」へきちんと流れないような気がしたんだ。 「Crack-Up」 の冒頭の部分は、何かしら解決されていないフィーリングから入らなければならないと感じていたんだけど、 「~Memphis」の元のバージョンは最後のコードが完結していたから、その間にどうにかして緊張感を生まなければと思って。そして「Crack-Up」でそれが解決されて、新しい場所へ向かっているように感じられるように。その最後の1分間は、 できる限りラウドに歌おうと試みたんだけど、曲の途中の物静かなヴォーカルとの対比が個人的にクールだと思っているんだ。 何かについてじっくり考えてて、それが思いもよらない不思議で神秘的な場所へ連れて行ってくれる感じだね。実は「~Memphis」が一番最初に作り始めた曲で、それが確か2014年だったと思うよ。




――今作には、音楽面やアートワークにおいて日本のモチーフが数多く登場しますが、琴や三味線を取り入れたことについて教えてください。これはスカイラーのアイディアですか?

ロビン:そうだよ。2つともスカイが持っていて、スタジオで作業してた時に持ってきたんだ。弾き方を習ったり、チューニングしたりするのはとても興味深かった。『サン・ジャイアント』に収録されている「Drops In The River」とかでも中国の古筝をつかったことがあるけれど、今回のアルバムの内容は個人的に日本に結びついている部分があったから、日本の楽器を取り入れつつそれを表現することができてクールだった。

――長年の充電期間を経て、スカイラーや他のメンバーと作業をし始めて、どれぐらいで再びしっくりきましたか?

ロビン:まず最初にスカイとシアトル北部にあるアナコルテスでレコーディングを始めて、お互い感触をつかんで、そこからNYでも少しレコーディングした。そしてメンバー全員でシアトルに集まって、完成している、またはほぼ出来上がっている曲のレコーディング行った。多分そのあたりから拍車がかかった、って感じかな。作業もうまく流れるようになって、完成した曲に他のメンバーがさらにパートを足したり、みんながアイディアをインプットするようになって。

――今回は外部のプロデューサーは使わず、ロビンとスカイの2人が主にプロデュースを担当したそうですね。

ロビン:スカイに関しては、 過去の2作よりプロダクションに携わっている。でも最初のアルバムはちゃんとしたプロデューサーはいなかったんだ。フィル・エックがシアトルでのレコーディングに1週間ぐらい参加してくれただけで、それを持ち帰って自分たちで作業してた。フルタイムで彼を雇うお金がなかったから。ミキシングはお願いしたけどね。2ndアルバムはフィルがフルタイムでいてくれて、彼と僕とでプロデュースした。いつも僕と誰かという2人のチームでプロデュースしてきた感じだね。



2018.1.18 FLEET FOXES @ Zepp DiverCity / Photo: Kazumichi Kokei


――今作はいくつものレイヤーや要素から成り立っていることもあり、アレンジやプロダクションにこだわりすぎてしまう懸念などはありませんでしたか?

ロビン:ノー(笑)。アルバムを作る時、どんなことに挑戦しようか、必ず考えるんだ。そのチャレンジというのは、とても複雑だったり、シンプルだけど効果的なものだったり、その時によるんだけど、どちらも達成するのが難しいのは間違いない。どちらにしろ人の心を惹きつける作品を作るのは困難だということだね。今回のチャレンジは、広漠とした作品を作ることだった。でも、こういう音楽だけが好きなわけじゃないし、次のアルバムがこの作品の延長線上のものになるわけでもない。だんだんプログレっぽいクレイジーなバンドになるつもりはないよ(笑)。シンプルな曲の方が、多少は作るのが楽だから。常にチャレンジ精神を持って作品に取り組んでると思いたいし、自分自身が興味を持てる音楽を作り続けたいんだ。

――そんな中で、トラディショナルなバンドのフォーマットが窮屈に感じることは?

ロビン:現段階だと、多少はそう感じる。ギターやトラディショナルなドラム・キットを使わないフリート・フォクシーズのアルバムを作れたら面白いと思う。ただ、一番重要なのは曲だ。アレンジとかは関係なく、人はいい曲に反応し、惹きつけられる。だから僕はとにかくいい曲を書くことを目標としているね。

――ロビンにとって、最もシンプルかつ心惹かれる曲は?

ロビン:エド・アスキュウの「Blue Eyed Baby」かな。コード進行がとてもシンプルで、コーラスやブリッジもない。詞もシンプルだけど、とても深い、確信をついた内容になっているんだ。




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年を重ね、演奏し続けるとともに新たな意味が生まれてくる

――アルバムのオープニングを飾る「I Am All That I Need / Arroyo Seco / Thumbprint Scar」でバンドの代表曲でもある「White Winter Hymnal」をサンプリングした理由は?

ロビン:この曲はすごくNYっぽいと思ってて―騒がしくてクレイジーな場所もあれば、静かな場所もあって、曲の各パートがNYの様々な地域を表しているよう。NYの浜辺で僕がレコーディングした波のサンプルも使われていて、曲の最初の部分は僕のアパートが舞台になっている。ちょうどこの曲をレコーディングしてる時、友人の娘があの曲を合唱団と歌ってるビデオを送ってきた。その会場がレコーディングしていた場所から10分ぐらいのところで、NYだし、僕たちの曲だけど青年合唱団が歌うようにアレンジされていてピッタリじゃないか、と思ったんだ。そこで曲のタペストリーに加える新たなレイヤーになったんだ。

――ヒップホップではサンプリングは日常茶飯事ですが、バンドがやるとちょっと抵抗があるみたいな節がありますよね。

ロビン:そうだよね、探求してみたいことの一つではあるんだ。僕たち、今作から<ノンサッチ>に所属していて、彼らは素晴らしい作品を数々リリースしているから、そのカタログを使って何かができたら面白いなと思ってて。



▲ 「I Am All That I Need / Arroyo Seco / Thumbprint Scar」 (Live on KEXP)


▲ 「White Winter Hymnal 」MV


――今作の歌詞カードを見ると、所々に実際には歌われていない[]で囲ってある詞がありますが、これはより視覚的な要素やフィーリングを喚起させる意図ですか?

ロビン:いっそうのことアルバムより映画を作った方が良かったのかもね(笑)。時間をものすごくかけたアルバムをリリースする上で興味深かったのは…今君に1曲目( 「I Am All That I Need / Arroyo Seco / Thumbprint Scar」 )について僕が感じていたことを話したけど、それはきっと君の元々の印象とは違ったはずだ。長い時間をかけて曲を作ったことで、僕自身の曲に対する独自の視線が出来上がっていたので、そういった関連性を少しばかり詞を通じて伝えたかったのと、なんとなく面白いかなと思ってやったんだ。

――ちなみにヴィジュアル・アルバムを作ることは考えなかったのですか?

ロビン:それが可能な予算があったら、もちろんやったよ!

――お兄さんのショーンにお願いして…。

ロビン:彼とは話したよ。今、次のアルバムのためにフルでヴィジュアルを作れればっていう話をしているんだ。



2018.1.18 FLEET FOXES @ Zepp DiverCity / Photo: Kazumichi Kokei


――以前、グリズリー・ベアのメンバーをロビンがインタビューした際に、現代の音楽の生態系においての自分たちの立ち位置など、興味深い話をしていましたが、いち音楽ファンとして加速する音楽の民主化について思うことは?

ロビン:僕が子供だった頃、アルバムがいかに神聖なものだったかを思い出す。レコード屋に行かないと手に入らないし、レアなものだと街はずれのヘンテコな店や通販で買わなければならなくて、まるでインディー・ジョーンズが宝物を探すような感覚だった。決して便利ではなかったけれど、楽しかった。リリースに向けての期待感みたいなのもあって、今みたいにタイトルを入力すれば聴ける、というのとは全く違う体験だった。とはいえ、それは音楽というより宝探しみたいな感じだよね。音楽を気軽に聴けることはいいことだと思うし、その料金が手頃であれば文句はない。値段が音楽を聴くことの障害にならないところは好きだ。だからおおむねポジティブだと感じているよ。

――リスナーが楽しむことができる音楽が増えたことから生まれるアーティスト間の競争環境はポジティブで、よりクオリティの高い音楽の制作を促していると感じますか?

ロビン:どうだろう。ちょっと前に読んだ記事に、今は曲の最初の30秒をリスナーに聴いてもらわなければならないって書いてあった。それはSpotifyが、30秒以上聴かないと1ストリーム分の対価を支払ってくれないから。でもこれまでだと、僕の友達でポップ・ソングを書いてる人たちは最初の1分間中にコーラスを入れなければ聴いてもらえないって言っていた。それがだんだん短くなっていて、そのうち15秒から5秒になって、コーラスのみで作られた曲が生まれたりしてね。コーラスを聴いた時のあの高揚感を感じられればいいみたいに。でも、その代わりにあらゆる種類の音楽が聴けるようになるんだったら、別にいいんじゃないかな。



2018.1.18 FLEET FOXES @ Zepp DiverCity / Photo: Kazumichi Kokei


――デビュー・アルバムのリリースから約10年経ちますが、過去の曲と付き合い方は変わってきましたか?

ロビン:昔の曲を演奏するのは今でも好きだよ。歌うのも挑戦だし…なんとなく切なくもなる…(笑)。どんなに頑張っても、曲って書いた時の自分のポートレートだから。その時にはそうは思わないかもしれないけれど。過去の曲を演奏していると、自分がいかに目を大きく開いた若造だったか感じる。年を重ね、演奏し続けるとともに新たな意味が生まれてくるんだ。

実はすでに次のアルバムのために曲を書いているんだけど、デビュー・アルバムを作っているって認識で作業を進めてるんだ。『クラック-アップ』を作っていた時の問題点の一つは…問題っていう表現はちょっと違うかもしれないけど、新しく作った曲を過去の曲と一緒にパフォーマンスしなきゃいけないことはわかっていたから、過去の曲とは違う、似たりよったりな曲は書かないようにする必要があった。でも今作っている曲では、そういうことは考えないようにしてるから、 デビュー・アルバムのような感じがするんだ。

――さきほど、少し話に上がった自身の曲に対する新鮮味についての見解を聞かせてください。

ロビン:それについて、以前すごく悩んでたんだよね。たとえば、6か月前に書き始めた曲だと、もうそれ以上手を加えるには古すぎるんじゃないかとか。今も頻繁に考えることで、アルバムのリリース・スケジュールも関係してくる。アルバムをリリースしても、その内容は今の自分が1~2年前に感じていたことでかなりタイムラグがある。けれど曲を作るのにも時間がかかる。その時間がどうにか縮める方法があればとは思うけれど、特に今作のアルバムに関しては短い期間で書くのは不可能だった。努力を要したし、曲が自然と流れ出すのを待ちたかった部分もあったから。今回は過去の繰り返しや何かのコピーではない…類ないアイディアを重視していて、それが今浮かんだものでも、2年前に浮かんだものでも関係なかった。そのアイディア自体を深く信じていたから。

――では最後に、ソロ・アルバムの進捗について教えてください。制作に取り掛かっているというニュースからしばらく経っていますが…(笑)。

ロビン:(笑) 一応曲はあるんだけど…。

――ジョアンナ・ニューサムのオープニングを務めていた時に演奏してた曲など?

ロビン:そう、それもあるし、あと他にも何曲かあって、タイトルも決めてるから…いずれリリースできたらとは思ってる。そのうち出来るかな、って感じだな。




フリート・フォクシーズ「クラック-アップ」

クラック-アップ

2017/06/16 RELEASE
WPCR-17767 ¥ 2,138(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.アイ・アム・オール・ザット・アイ・ニード/アローヨ・セコ/サムプリント・スカー
  2. 02.カシアス、-
  3. 03.-ナイアーズ、キャサディーズ
  4. 04.ケプト・ウーマン
  5. 05.サード・オブ・メイ/大台ヶ原
  6. 06.イフ・ユー・ニード・トゥ、キープ・タイム・オン・ミー
  7. 07.メーアークスタパ
  8. 08.オン・アナザー・オーシャン(1月/6月)
  9. 09.フールズ・エランド
  10. 10.アイ・シュッド・シー・メンフィス
  11. 11.クラック-アップ

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