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砂井博文「CHART insight」インタビュー

 2016年3月から新しい放送サービス『i-dio』(V-Lowマルチメディア放送』)がスタートする。これは、地上アナログテレビ放送終了後に空いた周波数帯のうち『V-Low』と呼ばれる帯域を利用して創設されるもので、3月から東京・大阪・福岡でプレ放送が開始し、順次全国展開を予定している。どんな放送でどんな新しいことができるのか。この立ち上げの主要メンバーの1人、ラジオ局TOKYO FM 編成制作局 編成制作部所属で、『i-dio』にコンテンツを提供するTOKYO SMARTCAST 編成制作部長を兼任している砂井博文氏に話を聞いた。

達郎さんの番組への真摯な向き合い方は、ラジオマンとして本当に頭が下がります

――砂井さんは、ラジオ局『TOKYO FM』の編成制作局に所属されていますが、ラジオ業界歴はどれくらいになるんでしょうか?

砂井:新卒でラジオ制作会社に就職したので1991年からになります。担当した番組は、もう数えきれないくらいですね。制作会社に入ったころから『BIG BANG TOKYO』 や『MORNING FREEWAY』といった朝の生放送番組に携わって、AD含めると10年ほどはやっていました。それ以外にも昼のワイド番組や録音番組など本当にたくさんの番組に関わってきました。

――そんな中でも特に印象に残っている番組ってありますか?

砂井:山下達郎さんの番組『サンデー・ソングブック』(日14:00-14:55 TOKYO FMをはじめとするJFN系列全国38局ネット)には、2008年から2015年までの7年間、プロデューサーとして担当させてもらいました。この番組は達郎さんご自身が選曲、構成、トーク内容のすべてを考えられていて、台本というものがないんですね。達郎さんが所有しているライブラリーから選曲して、FMの電波に乗ったときに1番いい音で聴けるようにデジタル・プロセッシングして、本当に時間をかけて作っているんです。

――そこまでご自身で行うなんてすごいこだわりですね。

砂井:達郎さんの番組への真摯な向き合い方は、ラジオマンとして本当に頭が下がります。あとは、いま放送している朝の生放送番組『中西哲生のクロノス』(月-金6:00-9:00 TOKYO FMをはじめとするJFN系列全国38局ネット)も印象に残っている番組のひとつですね。元々、自分が若いころに朝の番組をやっていて、色々なキャリアを積んだ40歳を過ぎてから、また朝の番組のディレクター兼プロデューサーという立場で戻ったんです。私が担当し始めたときは聴取率が良くなかったのですが、自分が経験してきたことのすべてを出し切って、ターゲット層であるM1F1ナンバーワンとなりました。できることをいろいろとやって、それが実ったという部分があるので、思い入れの深い番組ですね。

――そもそも砂井さんがラジオ業界に入ったきっかけとは?

砂井:子供の頃からラジオをよく聴いていて、AMもFMも両方とも聴いていましたね。大学のときに放送研究会に入っていたんですが、そこで番組を作る経験をして面白いと思いました。新しいラジオステーションが次々と立ち上がった時期だったので、ラジオ制作の仕事がしたいという思いがさらに強くなり、ラジオ番組制作会社に就職しました。

――20年以上ラジオ業界にいらっしゃって、ラジオ業界はどう変わっていきましたか?

砂井:90年代のころと大きく違うのはメディアの数が増えたことですね。インターネットが普及して、音声メディアがラジオだけじゃなくなり、競合が増えました。その一方で、昔は「電話リクエスト」だったのが、メールやWEB、SNS連動など、ネットを活用した新たなリスナーとのコミュニケーション展開も生まれています。

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――いま砂井さんが取り組んでいる新しい放送サービスについて教えてください。

砂井:いまの話に繋がるのですが、ラジオとネットって相性がいいんです。そんな放送の一斉同報性と通信の双方向性を併せ持った新たなメディア、<放送と通信のハイブリッド・メディア>と言ってるんですが、『i-dio』という放送サービスを3月から東京・大阪・福岡でスタートし、順次全国に拡大していく予定です。『TS ONE』というのが、私が所属しているTOKYO SMARTCAST社が運営する『i-dio』のチャンネルの1つです。この放送は、『i-dio』のチューナーが入ったスマートフォン『i-dio Phone』や、専用wi-fiチューナーと既存のスマートフォンのアプリを使って聴くことができます。音声だけでなく、いろんなデジタルデータを送り届けることが出来るのが特徴で、例えば、楽曲がかかっているときに、曲名、アーティスト名、ジャケット写真などを放送の電波で届けることができます。そこから、CD購入やDLサイトへリンクさせる。また、番組ごとに、掲示板のようなトークルームを作って、番組についてリスナー同士が交流できる場を提供する。さらに、番組で特集した内容をテキスト化して、データ放送で送ったり、Web上にアーカイブして放送後にもコンテンツとして楽しんでいただく、といった具合です。「聴く」、「見る」、「知る」から「手に入れる」までをひとつのデバイスで完結する利便性を併せ持った、“音声放送+データ放送+WEB”が一体となった音楽レコメンデーションメディア、それが『TS ONE』です。

――様々なことができる放送サービスなんですね。では、なぜこのサービスを立ち上げることになったのでしょうか?

砂井:日本でも音楽のサブスクリプションサービスが多く提供されて、音楽との出会いの場が増えています。プレイリストがたくさんあって、自分の知らない曲を知ることができて非常にいいことだと思います。でも、どこか機械的というか…。我々にはラジオで培ってきた感性や経験があり、人の手によるぬくもりのある音楽レコメンデーションの強さを再確認したんですね。さきほど『サンデー・ソングブック』の話をしましたが、音楽にこだわっている達郎さんが選ぶ曲だから、「いい曲に出会える」、という安心感がある。やっぱり人なんですよね。それで検索では到達できない、人の手によるレコメンデーションメディアを作りたいと思いました。

――なるほど、“人の手によるレコメンデーションメディア”がキーワードになっているんですね。

砂井:あと、デジタル放送なので高音質というのも特徴です。放送メディアとしては最高音質と言っていい、320kbbsで放送を予定していて、音質にはこだわっていきたいと思います。ハイレゾブームの流れもありますし、最高音質でいい音楽、新しい音楽に触れてほしいという思いがあります。

――そんな中で、Billboard JAPANチャートやUSチャートを使った番組がありますがどんな番組ですか?

砂井:毎週月~金の夕方5時から3時間の生番組で「ヒット」をキーワードにした「HITS ONE powerd by Billboard JAPAN」という番組で、“現在・過去・未来”を切り口にしていきます。Billboard JAPANチャートは、セールスだけじゃない様々な要素が入っていて、いまの時代に合ったリアルなものだと思っていますし、USチャートでは過去のアーカイブがあるので名曲掘り起しみたいな形で、時代を超えて知ってもらいたい曲を紹介できると思っています。また未来という意味で、新しい音楽界の才能を世の中に紹介していきたいと思っていて、そんな役割もこの番組の中にはあると考えています。また、週末は大型カウンドダウン番組『Billboard JAPAN Hot100』があり、Hot100の100曲をどんどんカウントダウンしていく予定です。

――今回、Billboard JAPANのチャートに注目していただいたのはなぜでしょう?

砂井:今の時代、話題になっている楽曲が、セールスだけだと追い切れていない気がしています。セールスはそこまで伸びていないけど、MVが100万回再生されている作品とかもありますよね。だからMV再生回数や、ツイート回数などを合算しているBillboard JAPAN Hot100はとてもリアルだと思いました。デジタル時代のリスナーの聴取環境にあってしかるべきチャートだと思います。

――『TS ONE』の中で他にはどんな番組を予定しているのでしょう?

砂井:シンボリックなプログラムとして『PREMIUM ONE』という番組を立ち上げます。一級のレコメンダー、アーティスト、音楽好きの方々に、自分で選曲してもらって自分の言葉で音楽を紹介してもらう番組です。ジャンルを幅広くやりたいと思っていて、例えば、ロック/ポップス、ジャズ、クラシックなど、確かな耳を持った各ジャンルのアーティスト/DJがレコメンダーとしてご出演いただきます。

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――私たちBillboard JAPANでは、“ヒット曲とは?”ということを様々な方に伺っているのですが、ラジオマンから見るヒット曲とはどんな存在ですか?

砂井:ラジオって不特定多数の人が同時にそれぞれ違う場所で聴いているのですが、ヒット曲が流れるとリスナーがひとつになれる感じがします。その曲がヒットした時代にすぐ帰れるというか。あと、ヒット曲は「音楽好きの共通言語」のような要素もあると思うんですね。ラジオにとって、重要な役割を果たしてくれていると思います。

――最近の砂井さん的ヒット曲はありますか?

砂井:秦 基博さんの「ひまわりの約束」。ディレクター時代から「10年後に聴いてもいいと思える曲」を紹介したいなという思いがずっとあって。「ひまわりの約束」は、この先もずっと付き合っていくんだろうなと感じましたね。

――なるほど、TS ONEでそんな未来のヒット曲もどんどん発掘してほしいです。

砂井:私たちのメディアは、“音楽を作っている人”と“聴き手”の架橋だと考えています。ヒット曲って、作り手から離れてどんどん独り歩きで広がっていくものだと思っていて、そのお手伝いをするのが私たち役割。それと、届け方にもこだわりたい。喋り手がどんな思いでその曲をかけているのか、それによって聴き手の受け取り方が変わってくると思います。例えば、プレゼントをもらったときに、贈り手の心のこもったメッセージカードが付いていたら嬉しいし、それによってギフト自体の印象も違ってくるじゃないですか。それと同じような感覚で、大切に“心に響く新たな音楽との出会い”を提供していきたいと思っています。

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