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2020/02/14

<レポート>今のONE OK ROCKが無敵のロック・バンドである理由 最新アルバム『Eye of the Storm』ツアー東京公演を見て

 ONE OK ROCKが2019年2月にリリースしたアルバム『Eye of the Storm』は、バンドの新たなフェーズへの移行を決定づけたマイルストーンたる最新作だった。未知への挑戦という、本作における一つの明確なテーマのもと、ジャスティン・ビーバーのコラボレーターとしても知られるプー・ベアーをはじめ、異ジャンルから招かれたプロデューサー陣と共に作り上げたこのアルバムは、彼らがドメスティックなロック・フォーマットから完全に逸脱し、世界で闘っていくためのサウンドを目指した、第2のデビュー・アルバムともいえる作品だからだ。

 そんなバンド史上屈指の意欲作である最新アルバムをリリースしたあと、まず4人が向かったのは北米。2月から3月までの約2か月間で26公演を行うという過密スケジュールを経て、5月にはヨーロッパ、7月にはメキシコも巡った。そして満を持して迎えた【ONE OK ROCK 2019 - 2020 "Eye of the Storm" JAPAN TOUR】は、追加公演含めて30公演以上に及んだ大規模ツアーであり、9月のキックオフから約4か月後、2020年1月30日に行われた東京公演は、Takaの体調不良によってキャンセルとなった愛知公演の振り替えを除けば、事実上の国内ツアー最終公演となるもの。以降にもオーストラリアとアジア諸国での公演を控えてはいるものの、今回のステージはONE OK ROCKの第2章における重要なターニング・ポイントになる、そんな好奇心と期待を胸にファンたちはこの日を待ち侘びただろうし、その気持ちに応えるようにTakaも冒頭、「今日は俺たちとお前たちの集大成にしようぜ!」と力強く宣言していた。

 オープナーは「Eye of the Storm」。端的に言って彼らの最新作は、広大な空間で映えるアルバムだ。シンプルに研ぎ澄まされたアンサンブルの中でいかにダイナミズムを生み出していくか、という精査と引き算のプロダクションを徹底した作品なのだ。とりわけアルバム表題曲であるこの「Eye of the Storm」は、まさに嵐の如く重厚感が押し寄せるスタジアム・ロックで、国立代々木競技場第一体育館の開放的な無柱空間との相性が抜群。紗幕に投影されたCGマッピングも大迫力だった。

 そこから急斜面を滑走するように8ビートの直球ナンバー「Take me to the top」へとなだれ込み、ショーは一気に加速。さらにノンストップで「We are」「Taking Off」とアンセミックな2曲が続けば、客席からは熱に浮かされたような大合唱が巻き起こり、続く「Re:make」で再び荒削りのパンク・サウンドに帰着する、早くもジェットコースター的展開でパフォーマンスが進んでいく。主軸はもちろん最新作『Eye of the Storm』なのだが、その中にバラエティ豊かな過去曲が配置されることで、改めてこのバンドの変化・進化の歴史を実感できるようになっていたのが今回のセットの大きな特徴だ。変わることを恐れず、未知の領域に飛び込むことを恐れなかったからこそ、彼らはおよそ凡百のロック・バンドたちとは比べ物にならないほどの経験値や含蓄性を獲得することができたし、その結果としてライブハウスから東京ドーム、あるいは野外フェスまで、文字通り場所を問わずオーディエンスを熱狂させる破格のライブ・バンドへと成長することができたのだ。

 ONE OK ROCKの現在地を語るうえでは、やはりTakaのヴォーカリストとしての成長も無視することはできない。生まれ持った声質の良さは言うまでもないが、近年その歌声にはさらなる磨きがかかり、数多のアーティストとコラボしてきた米シンガー・ソングライターであるMAXに「世界でも有数の美声の持ち主」と言わしめるほど、彼は歌い手として非常に魅力的なフロントマンとなった。「Clock Strikes」ではもはやお馴染みの超絶ロング・トーン(約20秒!)から、続くプー・ベアーとのコライト・ソング「Head High」では繊細なファルセット、そして「Grow Old Die Young」の金切声にも似た高音まで、歌による表現力の向上を何よりも感じたのがこのあたりの中盤セクションだ。

 加えて今回のライブで改めて確認できたのは、『Eye of the Storm』における楽器隊の演奏それ自体がとにかくシンプルかつタイトで、だからこそ、それぞれのサウンド処理の妙や表現力の高さがくっきりと浮かび上がってくるということ。オリエンタルなリフを刻むToruのギターとTomoyaのラテン風味なドラミングが絡み合い、そんな有機的なアンサンブルにRyotaのベース・ラインが背骨を通す「Change」は、特にライブだと驚くほどハイファイに聴こえるし、新作のプロダクションがライブという生の場面でもしっかり機能することを証明する1曲だろう。

 淡いアンビエンスと陰鬱なムードを醸す「Worst in Me」、客席でスマホのライトが星空のように輝いた「Be the light」、Tomoyaのピアノ伴奏と共に届けられた「In the Stars」の3曲が前半戦のエンディングで、楽器隊のインスト演奏を挟み、後半戦は「Push Back」からスタート。多層的なコーラスが壮大なこの曲は、海外のショーでは毎回オープニングを飾っていたナンバーであり、いよいよクライマックスに向かっていくセクションの露払いとしては最適な配置だったのではないか。

 続いて、「皆さんにはここから列車に乗っていただきます!」とアルバム『残響リファレンス』(2011年)から「キミシダイ列車」へ。ここまで抑揚の激しいメロディ・ラインを精密に歌い上げてきたTakaも、この曲あたりからは端正な歌唱を崩し、ユーモラスな身振りを交えつつ、曲中もガンガン煽るなど、直情的でアグレッシブなパフォーマンスが目立ち始めた。

 ロック・バンドとして世界で闘っていくということは、トラップやダウナー・ポップ、チルなモダンR&Bなどがチャートを席捲する現行の音楽シーンに対し、いかにロック・バンドとしてのアイデンティティを保ったうえで最適化していくか、ということを考えることとほぼ同義だし、まさに『Eye of the Storm』はそういった類のハードルに立ち向かったアルバムだった。そんなONE OK ROCKの最新モードによる本公演にあって、ある種のコントロール下に置かれたエモーションやエネルギーのタガを外し、一気にバーストさせたのが、青く瑞々しいかつてのエモ/パンク的な楽曲だったことを考えると、こうした古い楽曲の存在は、調和と暴走を自由に行き来する彼らのマジカルなライブ・パフォーマンスに欠かせないエッセンスなのだということが窺える。そういう意味では、これからも彼らはライブで過去の曲をプレイしていくだろうし、それらのディスコグラフィがセピア色の過去として色褪せていくこともないだろう。「じぶんROCK」を終えたあと、思わずTakaは「エグいわ…」と一連のパフォーマンスの感想をこぼしていたが、それだけのカタルシスをオーディエンスも含め、この空間にいた全員が感じていたことは間違いないはずだ。

 “We can be giants giants”と歌い上げ、力強いエンパワーのメッセージを発する「Giants」から、ライブはいよいよ終盤戦。「The Beginning」「Mighty Long Fall」と鉄板キラー・チューンを連発したのち、本編ラストは荘厳で極大のサウンド・スケープを描き出す「Wasted Nights」で締めくくられた。

 そして迎えたアンコール、披露された「Stand Out Fit In」と「完全感覚Dreamer」の2曲にあったのは、第2章としてスタートした新たな挑戦の1年間と、そこに至るまでにたしかに存在した第1章の歴史が溶け合い、今この瞬間へと昇華していく感覚。今のONE OK ROCKは、自分たちに必要なものを見定める客観性やクールネスと、無我夢中になって未来へ駆け出す衝動性やパッションを兼ね備えた、無敵のロック・バンドだ。そんな彼らの記念的ステージをTakaのホームタウンでもある代々木の地で迎えたことは運命的であり、同時に必然的でもあったのではないだろうか。ここからまた、彼らは新しい歴史を作っていくのだから。

Text by Takuto Ueda
Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)


◎公演情報
【ONE OK ROCK 2019 - 2020 “Eye of the Storm” JAPAN TOUR】
2020年1月30日(木)東京・国立代々木競技場第一体育館
<セットリスト>
01.Eye of the Storm
02.Take me to the top
03.We are
04.Taking Off
05.Re:make
06.Can't Wait
07.Clock Strikes
08.Head High
09.Grow Old Die Young
10.Change
11.Worst in Me
12.Be the light
13.In the Stars
14.instrumental
15.Push Back
16.キミシダイ列車
17.じぶんROCK
18.Giants
19.The Beginning
20.Mighty Long Fall
21.Wasted Nights
-En-
22.Stand Out Fit In
23.完全感覚Dreamer

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